小松 和弘(経営コンサルタント)- Q&A回答「法人化するのが良いか総合的に検討しましょう」 - 専門家プロファイル

小松 和弘
中小企業のITで困ったを解決します!

小松 和弘

コマツ カズヒロ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
ホットネット株式会社 代表取締役
Q&A回答への評価:
4.8/74件
サービス:0件
Q&A:367件
コラム:0件
写真:0件
お気軽にお問い合わせください
03-6685-6749
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。
印刷画面へ
専門家への個別相談、仕事の依頼、見積の請求などは、こちらからお気軽にお問い合わせください。
問い合わせ
専門家への取材依頼、執筆や講演の依頼などは、こちらからお問い合わせください。
取材の依頼
専門家への資料の請求は、こちらからお問い合わせください。
資料の請求

個人事業の継承を法人化して行うには

法人・ビジネス 会社設立 2016/06/08 12:06

こんにちは。両親が始めた小さな花屋を夫婦で運営しています。
父は73歳で入院中。母は私たちの為に週3回出勤してくれています。
年間売り上げは3千万ほどで、この地域では立地の良いテナントビルで運営しています。
母は数年前より店を私たちに譲ると申しておりますが、父は会計や節税に力を入れており、また楽しみにもしています。
父の現状をみると、周囲からも早く店を譲るようにしたほうがいいと言われておりますが
個性的な父で、自分の納得する形でないと話を進めたがりません。
私たち夫婦はそんな父のやり方に葛藤しながらも、10年前倒産寸前の状態の店を
通常の運営ができるまで回復させたというおごりのような気持ちもあり、正直父の納得を得るくらいなら独立しようかとも思っています。
そんなおり、知り合いの方が
「法人化して相続しては」とアドバイスくださり、本を読んだりして知識を得ながら今に至ります。
そこで法人化して継承を行うにはなのですが、どのような方法があるかアドバイスいただけたらと思います。

1.私たちは現金出資、父は現物出資というような形になるかと思います
2.業務を行うのは私たち、両親は事実上引退
3.従業員はパート3名
4.消費税は毎年50~60万円程度支払いしています
5.今後事業を大幅に拡大することは望んでおらず、状況が好転していけばそれに合わせてというような気持ちです
6.借り入れはありません。

この内容では何とも、、という感じかもしれませんが
とにかく父を説得できる材料を探している状況です。お力添えをお願いします。

switchさん ( 福岡県 / 女性 / 36歳 )

小松 和弘 専門家

小松 和弘
経営コンサルタント

- good

法人化するのが良いか総合的に検討しましょう

2023/10/23 22:25

switchさん、こんにちは。

ご家族で経営されている花屋を法人化して継承を行うにはどうしたらよいか、というご質問と理解しました。法人化を前提で質問されていますが、いただいた情報だけでは必ずしも法人化した方が良いとも判断できませんので、個人事業主での事業承継も選択肢として含めて以下に整理して説明していきます。

1.親族内事業承継の進め方
ご家族で事業を承継されるので、親族内事業承継を前提とします。承継の進め方は、個人事業主と法人で異なるため、その違いを記載します。

(1)個人事業主の事業承継
個人事業主の場合は、旧事業主は廃業し、新事業主が開業する形になります。それにより旧事業主から新事業主に全資産を引き継ぐ手続きが必要です。それぞれの資産の評価額を算出し、その評価額に伴って納税する必要もあります。そのため、資産の移転に関しては個人事業主の方が多くの手順が必要です。

●旧事業主の廃業手続き
税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」、「青色申告の取りやめ届出書」、「事業廃止届出書(消費税)」、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を提出します。その他、社会保険や労働保険に関しては年金事務所やハローワーク、屋号や商号など登記に関する手続きが必要な場合は法務局など、関連する行政機関で手続きを行います。

●新事業主の開業手続き
税務署に、「個人事業の開業・廃業等届出書」、「青色申告承認申請書」、「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」、「源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書」、「消費税課税事業者選択届出書」、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。それ以外に、従業員を雇用する際には給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の提出が必要となります。また、必要に応じて承継した資産や契約の名義変更などの手続きを行います。

(2)法人の事業承継
法人の事業承継の場合、経営権・支配権を後継者に移行させるために、自社株式を引き継げばよいだけで、個人事業主よりも手続きは容易です。株式を引き継ぐ際に、贈与税や相続税が発生します。

(3)税金の対応
事業承継は、個人事業主も法人も税制の支援を受けられます。個人事業主が対象の個人版事業承継税制と、法人が対象の法人版事業承継税制があり、事業の継承において発生する贈与税・相続税の納税を猶予することができ、最終的には納税を免除できるのが大きなメリットです。ただし、細かく定められた制度適用のための規定や要件を途中で満たせなくなると、全額納税する必要がでてきます。メリットは非常に大きいですが、複雑な制度なため、利用を検討する際は事業承継に詳しい専門家に相談することをお勧めします。

(参考)
個人事業主の事業承継について、税務上の留意点はありますか?(J-Net 21)
https://j-net21.smrj.go.jp/qa/succession/Q0079.html
親族内承継の方法と注意点(J-Net 21)
https://j-net21.smrj.go.jp/handbook/succession/shinzoku.html
国税庁 事業承継特集
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/index.htm

2.個人事業主と法人との比較及び法人化の手続き

事業承継だけ見ると、法人化はメリットがありますが、法人化する場合はその他のメリット、デメリットもあるので、個人事業主のままが良いのか、法人化した方が良いのか、総合的に比較検討することをお勧めします。以下にメリット・デメリットと法人化の手続きを記載します。

(1)個人事業主が法人化するメリット・デメリット
●メリット
・社会的信用が高くなる
販売拡大や人材採用、金融機関からの融資などで個人事業より有利です。
・経費に計上できる範囲が広がる
法人では、個人事業主が計上できる経費に加え、給与や賞与などの費用も経費として計上することができます。
・利益が大きいと、節税効果が出る
個人事業主に課せられる所得税は稼げば稼ぐほど税率が高くなっていく一方、法人の法人税の税率は、利益が800万円以下は15%、それ以上は23.2%です。地方税まで考慮しても最高税率は36%くらいです。つまり、個人事業主がある一定の利益を超えると、法人化した方が税金を抑えることができます。所得税の税率は900万円を超えると33%となるので、個人事業主としての利益が800万円~900万円くらいになったなら、法人化を検討すべきです。
●デメリット
・手続きの手間や費用がかかる
法人の場合は設立時に費用が発生します。株式会社の場合は登録免許税や定款の認証手数料などで、22万円~24万円ほどの費用がかかる見通しです。
・赤字でも税金の支払いが必要になる
法人は赤字でも法人住民税の均等割である年7万円(東京の場合で自治体によって異なる)を納めなければなりません
・社会保険の加入が義務になる
法人の場合、すべての役員と正社員、一部のパートタイマーは厚生年金と健康保険に加入が義務付けられます。給料の約15%の保険料を法人が負担します。

(2)個人事業主が法人化する手続き
●法人の設立
法人化する際にはまず、法人設立に関する手続きが必要です。具体的には、定款の作成と認証、資本金の払い込み、設立登記申請といった手続きを行います。株式会社や合同会社など会社の種類によって手続きは多少異なるため、設立する法人の手続き内容を確認しておきましょう。
●個人事業の廃業手続き
1の(1)で記載した「旧事業主の廃業手続き」と同じ手続きが必要です。
●資産や負債の引き継ぎ
設立した法人に、事業に関わる資産や負債を引き継ぎます。資産の移行には、「売買契約」「現物出資」「賃貸契約」の3つの方法があり、それぞれ手続きや税法上の取り扱いなどが異なります。
●許認可手続きや各種契約物の名義変更
許認可が必要な事業や、店舗の賃貸契約を結んでいる場合などは、個人から法人への名義変更を行います。取引に使用する銀行口座も法人名義の口座を開設した方が良いでしょう。

(参考)
個人事業と法人のどちらが良いか(J-Net 21)
https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list6/6-3-2.html
株式会社の設立手続き(J-Net 21)
https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list6/6-2-1.html
合同会社の設立手続き(J-Net 21)
https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list6/6-3-5.html

3.判断のポイント
事業承継だけを考えると、法人化した方が円滑に進められます。一方で、個人事業主から法人化への手続きが加わるので、「事業承継のメリット・デメリット+法人化のメリット・デメリット」を総合的に判断する必要があります。判断ポイントの1つは、事業規模です。個人事業主としての利益が800万円~900万円くらいになるのであれば、節税効果を考えて、法人化のメリットが増えます。もう1つはお父様とのお話し合いで、どちらがより納得していただきやすいかも考慮する必要があります。

以上のご説明がswitchさんのお役に立てれば幸いです。今後のswitchさんのご活躍を祈念いたします。

補足

国が設置する公的相談窓口として、「事業承継・引継ぎ支援センター」 があり、福岡県にもあります。そこでは無料で事業承継に関する相談を受け付け、事業承継計画策定等の支援も行っています。必要でしたら、ご活用してみて下さい。

(参考)
事業承継・引継ぎ支援センター
https://shoukei.smrj.go.jp/

プロフィール評価・口コミ対応業務経歴・実績連絡先・アクセスQ&A