平野 由夫(獣医)- Q&A回答「Re:大型犬 骨肉腫 予防接種」 - 専門家プロファイル

平野 由夫
獣医療の透明性と動物に優しい診療を、常に心がけています。

平野 由夫

ヒラノ ヨシオ
( 神奈川県 / 獣医 )
ひらの動物病院 病院長
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大型犬 骨肉腫 予防接種

人生・ライフスタイル ペットの医療・健康 2010/11/21 07:24

はじめまして。

とある外国種の大型犬、男の子で現在8歳8ケ月です。

今まで病気や怪我などせず食欲もあり、とても元気でいました。(室内飼いです。)

3月の下旬に、夕方 突然前足をあげて全く下につかなくなり、元気がなくとても痛そうにしていました。(食欲はあって夕飯も完食していました。)
あまりにも いつもと様子が違っていたので、急いで病院に連れていきました。
レントゲンと医師の触診で骨肉腫であり、骨も虫食いのようになっていて、とにかく急いで断脚をしなければいけない、とのことでした。
本人も痛みがかなりあって、一刻の猶予もならないというので その日の晩に断脚手術をうけました。
突然のことで気も動転し、泣きながら帰り次の朝 9時過ぎに迎えに行きました。
変わり果てた姿に涙がとまらず、でも手術は成功したとのことでしたので、今後の治療等について説明をうけました。余命も、抗がん剤治療を行って100日程、しなければ30日前後だと言われました。幸いにもレントゲンでは肺に転移は見られないとのことでしたので(あくまで視覚的に)この子に出来る限りの最高の医療をお願いし、抗がん剤治療を始めました。
何とか歩く事も軽く走る事も出来る様になり、食欲もあり元気で、断脚したこと以外は、以前と何も変わるところはありませんでした。
ある日、主治医が狂犬病の注射と8種混合の予防接種をしましょう、と言いだしました。
病理検査の結果もリンパ腺にも血液にも転移は見られず、元気もあるということで抗がん剤(カルボプラチン)の量も最大の「100」を投与していて、私共も家庭内において食事も免疫低下による感染症などについても細心の注意を払っております。
骨肉腫で肩から断脚し上記の様な治療も受けている状態で、狂犬病や8種混合といった注射を、それも一度に接種してもいいものなのでしょうか。
医師は「免疫力が下がっているからこそ、これらの予防接種をしなくてはいけない。」と言います。
現在のこの様な状況と状態で注射をうけるのは、危険な事ではないのでしょうか?
ほかの抗がん剤治療を受けているわんちゃん達はどうしているのでしょうか。
是非、ご意見を伺うことができたら幸いです。
宜しくお願いいたします。

補足

2010/11/21 07:24

質問に対してのご返答に対して、お礼をと思ったんですがパソコンのキーを変に押し違えた様で、失礼ながらこちらの補足の欄にて失礼させて頂きます。

実は、担当医が、狂犬病と8種混合の予防接種を早々にした方が良いと、あまりにおっしゃるので5回目の抗がん剤治療の後に納得がいかないまま半ば、仕方なくといった様な感じになり投与しました。

その次の抗がん剤治療の点滴の真っ最中に、急に咳をし始め、それ以降 食欲はあるものの微熱がと夜も眠れない程の咳が続き出しました。
そして突然、腰が砕けた様になったかと思ったら立つことが全く出来なくなり(なんとか座ることは出来ました。)病院へ急いで行き診て頂いたところ、なんの検査もな「ヘルニアでしょう。」と言われ、その場で注射を2本うち、「3日程は毎日通院し、注射をすればとりあえずは治ると思います。」と処方箋も出ました。

その後、ほとんど歩くことは出来ず、かろうじてトイレにいく(直近の)程度のまま、微熱と咳に苦しみました。

咳は出始めてすぐに医師に詳細を伝えましたが、「抗がん剤治療中で免疫力がおちているせいで風邪でもひいたのでしょう。」
と全く検査も私の言う事もよく聞いてもらえずに、そのうち咳と一緒に喀血までしました。

すぐに「肺に水が溜まっているので、とってしまえばすぐに楽になります。」とおっしゃり、わたくし共の目の前で胸部に針を何度も何度もさし、潜血がでました。

そして、そのまま息を引き取ってしまいました。
腕の中で逝かせてあげられなかった事に自責し、またあの様な形で旅立たなければいけなかったのか悔やまれてなりません。

思えば、毎年 必ずわんにゃんドッグも欠かすことなく検査し、骨肉腫であると言われた僅か18日前にも今年のわんにゃんドッグを済ませ、何も問題はないとの事であったのにと、毎日 何のために誰のために生きて行くのか自問自答の日々を過ごしております。

先生も、お忙しい中  早速のご返答を下さり心からお礼を申し上げます。

わが子も旅立ってしまい、もう先生の様な立派で学識高いお医者様に診て頂くこともなくなってしまいましたが、面識のない私やあの子の事を少しでも考え、お返事頂いたこと、感謝いたします。

ありがとうございました。

しゃぼんだまさん ( 東京都 / 女性 / 41歳 )

Re:大型犬 骨肉腫 予防接種

2010/11/21 18:30

はじめまして、しゃぼんだまさん。
ひらの動物病院の平野と申します。
ご返信させていただきます。

私も、しゃぼんだまさんのご質問の内容と同様の疑問を過去に抱き、国内外の文献・論文等をあらったことがありましたが、いくつかの議論や参考意見を見出すことができた程度で、獣医学領域におけるエビデンスあるいはガイドラインに類するものは見つける事はできませんでした。

ただし、国内外の多くの腫瘍専門医の意見は、『化学療法中、あるいは化学療法直後の動物には原則的にワクチン接種は行わない。』というものが一般的であると判断しました。これらは化学療法中の犬への生ワクチンの接種においてジステンパー、あるいはパルボウィルス感染症が発症したという報告がある事に基づくようです(化学療法終了後について、どのくらい経てば接種可能なのか、という点についても明確なものはなく、『かなりの時間をおいて』という程度の理解に留まるようでした)。

狂犬病ワクチンについては法的な側面がありますので、混合ワクチンと横並びでお話しすることはできないかと思いますが、混合ワクチンで予防し得るいくつかのウイルス性伝染病については、ワンちゃんの生活環境、地域での感染症の流行傾向に応じた考慮が必要となると考えます。

補足

私自身は、

●あらゆる化学療法剤の最終投与日から三カ月以上が経過している
●完全寛解期にある(あるいはそれに類する全身状態の安定が認められる

(上記2項目を完全に満たす)ワンちゃんで、ワクチン接種にて予防できるウィルス性感染症について感染の可能性を考慮すべき状況が感じられる場合は、

●該当のウィルス性感染症の抗体価を測定する

事を、ご家族にお願いし、

●抗体価が低く、感染の可能性がさらに高まっていると感じられる場合は、ワクチン接種についての考慮。
●抗体価が高く維持されている場合は、ワクチン接種については保留。

を、自院でのガイドラインとし、ご家族の判断を仰ぐ事にしています。


狂犬病ワクチンについては、

●あらゆる化学療法剤の最終投与日から三カ月以上が経過している
●完全寛解期にある(あるいはそれに類する全身状態の安定が認められる

(上記2項目を完全に満たす)ワンちゃんについては、原則、接種。

が、当院の判断です。

あくまでもワンちゃんの全身状態や感染症に対するリスク、個々の病態、生活環境、生活地域で違うべきものだと考えます。充分に、かつ繰り返し、納得のいくまでかかりつけの先生とディスカッションしていただくことをお薦めします。

以上を、ご返信とさせていただきます。
宜しくお願い致します。

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