教育の重要性② - 経営コンサルティング全般 - 専門家プロファイル

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寺崎 芳紀
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閲覧数順 2024年05月15日更新

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株式会社アースソリューションの寺崎でございます。

前回は、「教育の重要性」の1回目ということで、私がかつて経験した苦い話も踏まえて、書かせていただきました。 今回は、なぜ教育が必要なのかについて、私が考えていることを、具体的に書かせていただきたく存じます。

言うまでもないことですが、介護は「サービス業」です。 身体に触れ、心に触れ、人間に触れ、地域社会に触れる、介護という仕事。 介護をすることにより、人間の心や身体、地域に満足感を与える、究極のサービス業だと言えます。

また、介護を仕事として成立させるためには、介護技術や専門知識の習得はもちろんのこと、人間の尊厳や組織論、法令関係、いろいろなことを知っている必要があります。 ただ「やっている」だけで、心が通っていなければ、それは本来言うべきところの「介護」とは言えません。人間として良識を兼ね備え、尊敬を集められるような人格も、本来なら求められて然るべきです。

十分な介護技術を備え、知識もあり、接遇も抜群で、マネジメントもできて、経営的センスにも富み、人間的にも尊敬できる。 そんな優秀な方は、なかなかいないのが実情です。 でも、本当はそういう職員が、介護の現場を担っていかなくてはならないのです。

「そんな人、どこ探してもいないよ」と非難されるかもしれません。しかし、介護という仕事をする以上、目指していかなくてはならない基本条件だと思うのです。

例えば、訪問介護で「特定事業所加算」というものがあります。 研修を定期的に開催していることを、加算算定条件の一つに挙げています。 それ位、職員を教育することを、国は重要視しているし、期待もしているのです。 それをわかっていつつ、多くの事業所では、苦心しながらも研修等を行っていらっしゃいます。 しかし、なかなかうまくいかないようです。 なぜでしょうか?

よく聞かれる理由として、 「現場が忙し過ぎて、教育している時間がない」 「職員のレベルが低く、やる気もないので、教育しても意味がない」 「せっかく教育しても、介護職員はすぐに辞めてしまう。だから、教育しても無駄だ」 等々が挙げられるのではないでしょうか。

そうおっしゃりたい気持ち、わかります。

でも、そうおっしゃる事業所の社長さんや管理者さん、皆さんはじめからそう思ってこの事業をはじめられたでしょうか?恐らく、そうではないと信じます。 わかっちゃいるけど、進まないのが、教育というもの。 そういう考え方が、ところどころでは存在している。そう言わざるを得ません。

これも言うまでもないことですが、介護業界は深刻な「人材不足」を抱えている業界です。

高齢者はますます増える。団塊世代が高齢化している、独居高齢者や老々夫婦世帯が増えている。 認知症高齢者が急増している等、ニーズは確実に多様化しています。 これだけ、ニーズが多様化した高齢者が増えていくのに、それに比例して人材供給が追いつかない。 業界は、このようなジレンマを抱えながら、必死で事業運営されているのです。

これも、お気持ちは痛いほど理解できます。

そんな中でも、踏ん張っていらっしゃる事業所におかれましては、本当に頭の下がる思いです。 しかしながら、教育がおろそかになってしまうことを、「忙しい」「人手が足りない」という理由だけで片付けてはいけないのです。 その理由は、前述の通りです。

よく、事業所の管理者さん、法人の社長さんが問題視していることのひとつに、「接遇」があります。

私が見る限りでも、残念なことに、お客様に敬語が使えない職員や、身だしなみの整っていない職員、あいさつすらできない職員は存在します。 接遇に問題がある職員が一人でも存在すると、イコール事業所全体の評価につながる。 まさに、「一事が万事」です。

以前、某老人保健施設に見学に伺った際に、あるお客様に排泄誘導をしていた職員さんがいらっしゃいました。 すると、びっくりしたことに、そのお客様をトイレに座らせて、トイレの扉を全開にしたまま立ち去ったのです。 要は、そのお客様は、排泄している姿を人目に晒されていた、ということになります。

皆さん、この状況をどう思われますか?

どれだけ、そのお客様は恥ずかしい思いをされたでしょうか。もし、その方が皆さんの親だったら、許せますか?

私は見兼ねて、その方に注意をしました。「いくらなんでも、排泄している状態を丸見えにさせることは、よくないのではないか?」と。

すると、その職員さんは舌打ちをし、怪訝そうな表情でドアを閉め、介助をされていました。 あまりにひどい態度だったので、その施設の事務長に、コトの経緯を報告しました。 その事務長さんは、もちろん丁重に謝罪をされていたのですが、しきりに強調していたのは「人員不足」でした。

もうひとつ。 皆さんが、要介護高齢者の立場になったと仮定し、自分へのサービスが「機械的に」行われたとしたら、どうでしょうか?

答えは、言うまでもなく明らかなことですね。

例えば、オムツ交換や車椅子移動。 業務の上では、「おむつ交換が手早くできる」「車椅子を一人で2台3台動かせる」職員がいらっしゃるとしましょう。 介護の仕事に最も求められることは、「スピード」でしょうか? 介助を手早くできる人、効率ばかりを考えている人が、「仕事のできる人」なのでしょうか?

確かに、現場は時間との闘いです。 確かに手早く仕事をこなす人の方が、現場では重宝がられるかもしれません。 いわゆる「トロい」と言われる人は、やもすると「仕事のできない人」とみなされがちです。 理由を聞くと、「ただでさえ人が足りないのに、てきぱき仕事をしてくれないと現場が回らない」と。

しかし、いわゆる「トロい」と言われる人を、イコール「仕事ができない」と評価して、本当にいいのでしょうか? 実は利用者様から人気があったり、レクリエーションが上手だったり、特筆すべき部分があるかもしれないではありませんか!

人間には、適材適所があります。それを見極めてあげる必要はあります。 人員不足が大変なのも、よくよくわかります。忙しいと、ついついイライラしてしまうこともあるでしょう。 しかし、前述の通り、「忙しい=接遇が悪い」という理屈は、成立しません。 それが肯定されてしまったら、それはもはや「介護」の体をなしていないということになります。 教育は、どんなに忙しかろうが、どんなに職員の離職率が高かろうが、やらないということはありえないのです。

教育体制を進めていくのは、事業所だけの問題ではありません。

介護の現場で働く人にも、当然「主体的」に取り組まなくてはなりません。「やらされて」するのではなく・・・

また、介護職員には、「経営的な」考え方も持ち合わせる必要があると思います。

福祉をビジネスとして捉えることを、真っ向から否定する方が、今も存在します。 もし、そう本気で思っている方がいたら、非常に危険です。介護事業は、「きれいごと」だけではできないものなのです。

以前勤めていた施設で、部屋に誰もいないのに、長時間照明やエアコンをつけっ放しにしていて、平気な顔をしている職員がいました。 そんなことをして、一体何の意味があるのでしょうか? 「自分の家」で、子供が同じことをしていて、親は見てみぬフリをするでしょうか? どう考えても、ムダでしかないでしょう。

私は、そういうムダを徹底的に排除するために、やかましい位に注意しました。スタッフに、影で「ケチケチくん」とまで言われる位に、とにかく言い続けました。 「ケチケチくん」、大いに結構です。 スタッフに、「ムダなものを節約する」という文化が根付いていないのであれば、それも「教育」でしか正すことはできないと思うのです(もちろん、やり方は工夫が必要ですが)。

本来あるべき方法以外で儲けることは、問題外です。不正をして利益を得るなんてことは、断じてあってはなりません。 しかし、適正な利益を上げることは、サービスの安定供給の観点からも、職員の待遇をよくするためにも、絶対に欠かすことはできない重要なファクターなのです。

経営的な考え方を持ち合わせている方は、確かにいらっしゃいます。しかし逆に、そういう考えに乏しい人には、教育することによってしか、身につけさせることはできません。 いいサービスをつくっていくためには、「事業所」と「職員」双方の努力が不可欠ということになります。

まさに、車の両輪と一緒です。どちらか片方がアンバランスであれば、車は安全に走れません。

お金をかけなくても、忙しかったとしても、できることはあると思います。

批判もあるかもしれません。 しかし、「教育」が、よりよいサービスの提供に、欠かすことのできないものであることは、間違いないと思っています。

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(東京都 / 経営コンサルタント)
株式会社アースソリューション 代表取締役

介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします

有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。

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