- 黒崎 敏
- 株式会社APOLLO一級建築士事務所
- 建築家
対象:住宅設計・構造
敷地の小ささを「個性」と捉え、大きな空間では実現できない、独創性の高い小さな空間を目指すのが良いでしょう。
「狭小」という敷地に存在するある種の欠落感こそが、個性を表現するための優れた余白であり、結果として、住まい手のライフスタイルが反映された住宅となる必要条件と言えるでしょう。
すなわち「小さいこと」はそれだけで個性的なのです。
身の丈とは、自分に過不足なくフィットする大きさですから、常にその中心は「人」です。
既成の空間を、自分にフィットさせるのは簡単なことではありません。「身の丈」というのは、体にあわせて空間をつくることが前提であり、住まい手にとっては、この上ない楽しみです。
身の丈の空間には、自分自身の輪郭が浮かび上がりますから、変化する等身大の鏡を見ながら生活するようなものです。
それゆえ、日常の小さな変化や楽しみに気がつき、感動や喜びが味わえるのではないでしょうか。
最近は、若手建築家も身近な存在になり、彼らの建築デザインの対象も、小さなものにシフトしているようです。
これからの住まい手は、自分好みの上質な生地を使って、マイサイズの洋服をデザイナーにオーダーするような軽やかさが、一般的になるでしょう。
そこには、30年前の都市住宅のようなストイックさは必要ありません。
突出した個性も悪くありませんが、環境や社会に溶け込みながら共存する、各々の「小さなデザイン」の集合体こそが、新たな都市の顔をつくりあげ、豊かな生活へとつながるのではないかと思います。