- 村上 春奈
- 村上建築設計室
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
スリットを覗くと、その先に、広々としたテラス、長い軒先、そして奥にはさらにスリットが見えます。
このスリットは、風と視線を少し抜くために設けました。
小さな島に建つイエノイエの周辺は、いつも風が吹いています。強風が吹くことも多く(台風はもちろん)、『いかに風を逃がすか』が重要なテーマでもあります。こんなちょっとしたスリットですが、これにより風の通り道ができて、建物がダイレクトに風を受けるのを緩和することができます。
風は一定方向から吹くわけではなく、つねに変化していますので、その動きを読むことはとても難しいのですが、なるべく行き止まりをつくらないよう、適所に風の抜け道をつくり、家の中に清々しい空気が流れるようにしたいですね。
また、視線をどう抜くかも大きなポイントです。初めて家を訪れる人は「どんな家なんだろう?」と少なからず興味をもっているもの。アプローチからどう導いていくか・・・それには色々な手法があると思いますが、このようにちらっと中の様子が見えると、家に入る期待感がよりいっそう増すような気がします。
実際の人の目線に立って、何が見えて、何が聞こえて、何がどう感じられるのか・・・、それらを意識して設計するよう心がけています。
ところで、このスリット、外から中を覗けるだけでなく、当然テラスで寛いでいる時に外の様子を眺めることもできます。スリットを通して見る風景というのは、カメラのフレームを通したように、風景を切り取るので、同じ風景でも違った見え方ができて面白いものですよ。
村上建築設計室