- 松岡 在丸
- 松岡在丸とハウジング・ワールド
- 東京都
- 建築プロデューサー
対象:住宅設計・構造
家づくりにおいて「納得の家」「満足の家」という表現がよく謳われます。両者はとても似ていると思われるかもしれませんが、全く別のことであるという認識が必要です。
納得していても満足できない家というもあります。納得いかなかったけど結果的に満足できる家というのもあります。「納得=満足」ではない、ということなのです。
「納得する」という場合には、妥協が関係していることが多々あります。経済的な制約があったり、土地の広さに制約があったりして、思い通りに家づくりができない場合などは、まさにそれです。理性的な判断ですね。
しかし「満足する」という場合には、もっと人間の生活の本質に関係する要素が含まれます。精神的に満足するとか、健康的な生活を送れるとか、子供が元気になる、同居する家族が元気になる、ということです。
「満足の家」を建てるための要素について理解していないと、せっかく妥協の上に「納得して」建てた家でも、結果的に不満がたまり、15年もすれば住み替えたくなってしまいかねません。
ではどんな家が「満足の家」になるのでしょうか。
ライフスタイルが向上する
私が主催する勉強会では、海外の豊かな生活との比較について触れることが多々あります。家族がともに食事をしたり、余暇にホームパーティーを楽しんだり、家の中でリラックスして精神的に充電で来たり、ということです。
その家に住むことによって暮らしがどのように向上するのでしょうか。そのための間取りとはどんなものなのでしょうか。結果として、生活スタイルが良質になるものとなれば、その家は「満足」できる仕様ということになります。
モノが減る
日本で多いのは、「たっぷり収納したい」という要望です。しかし、一番お勧めしたいことは、モノよりもヒトを大事にする家づくりです。
どんなにたくさんの便利なものを持っていても、家族がゆとりをもって過ごせるスペースが無くなってしまっては本末転倒な話ではないでしょうか。家族よりもモノを優先する、という現象が、今の日本人の生活を占めているようです。
ですから、モノが増えていって家が重く、狭くなる、ということを避けるようお勧めします。地震に強く、そしてみんなで交流できるような広いスペースを優先するためにも、できるだけ持ち物は必要最低限に抑えたいですよね。
質の良い家具を少数だけ持つ、というほうが、結果としては家で過ごすひと時に満足感を覚えることになるものです。
暖かくして静か、そして明るい
寒さは万病の元です。日本は四季があり、冬は零度になるところも多い地域であってもいまだにシングルガラスの建物が多いですね。外の気温も音も筒抜けで、決して落ち着くことができません。
家は本来、人が安全に健康を守って生活するためのもの。ですから、温度管理がしっかりしていなければなりません。断熱性能にこだわると、それに伴って遮音性も高まっていきます。
しかしながら、人間は狭い空間に長くいると次第に精神的に追い詰められていくものです。外にいるほうが開放的、となってしまっては、家を建てる目的がわかりませんよね。せっかく建てるのですから、「家にいると幸せ」と思えるような家がいい。それが「満足する家」というものです。
もし部屋が広くて外光もたっぷり入り、適度な室温と静けさが保たれていたらいかがでしょうか。「満足」というのはそのような空間から生まれるのではありませんか?
暗くて寒くて狭いことに加え、もし前述のように家具がたくさん入っているなら、居心地は悪くなります。
家族みんなが健康になる
シックハウス症候群の問題も無視できません。建築資材に含まれている化学物質の影響は、なかなか目には見えません。自然素材の価値を認識しましょう。
それとともに、適切な湿度管理も重要です。冬のインフルエンザ予防には、湿度を適切に保つことが有効です。
太陽光が入りやすいことによって、一日の体内時計がしっかりと働くような環境も重要です。
ここでは4項目ほど挙げましたが、これらすべての項が満たされていなくても、理性で「納得する家」というのは作れてしまうものです。その時「納得」できても、少なくとも上の4項目で「満足」できなければ、その家に長く住みたいとは思えなくなっていきます。
子供も家に帰って来たくなくなります。将来の帰省頻度にも影響するでしょう。
仕事から帰ってきてもリラックスできなくなります。
毎日の家事が苦痛になっていきます。
「納得」と「満足」ではなく、優先順位をしっかり定めましょう。「満足」>「納得」なのです。
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