- 羽柴 駿
- 番町法律事務所
- 東京都
- 弁護士
対象:刑事事件・犯罪
- 羽柴 駿
- (弁護士)
- 羽柴 駿
- (弁護士)
それでは、今回のアメリカ側の法制度による逮捕は、この一事不再理原則に照らしてどのように考えたら良いのでしょうか。
それを考える参考になる日本の刑法の規定があります。「外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。」というもので(5条)、外国の裁判所で刑事事件の確定判決を受けた者を、同じ罪で日本の裁判所がさらに処罰することが出来るとするものです。
この規定は、ただし書きが刑の執行について外国での執行を日本国内でも考慮することを定めているところから明らかなように、直接的には外国で有罪判決を受けた場合にさらに日本でも有罪判決を下すことを想定した規定です。もし、この条文の「外国に」おける「確定裁判」という概念には無罪判決は含まれないとすると、外国で無罪が確定した者を同じ罪で日本の裁判所で処罰することは出来ないと解釈する余地があります。しかし、日本の裁判所や学者は、おそらくそのような解釈はとらないでしょう。
このように、日本の刑法は一事不再理(あるいは二重の危険禁止)原則は外国の判決には及ばないという考えに立つものと考えられます(さもなくば、この規定は憲法39条違反ということになります)。
私はアメリカ法については専門家ではありませんが、今回の逮捕劇を見ていると、おそらくアメリカ法も同じような考えに立っており、外国判決(この場合は日本の無罪判決)があってもアメリカで裁判することが出来るという前提なのだろうと思われます。
(次回へ続く)