室内温度は室内に熱源が無ければ、外気温に影響されます。その為、外気温の影響から室内を守るために断熱を施します。今は断熱が主流の時代ですが、室内温度の変化を遅らせる方法は他にもあります。
熱の伝わり方は、三種類あります。対流・伝導・輻射です。対流は熱を伝えるのに媒体を必要とします。空気や液体と云った媒体が無ければ熱は伝わりません。伝導は熱源と直接接していなければ熱は伝わりません。
すなわち、太陽から地球に到達する熱は100%輻射熱という事になります。輻射熱は原理から云いますと電子レンジと同じです。電磁波の種類がマイクロ波か赤外線かの違いだけです。
太陽からの赤外線が、屋根瓦や壁体を温め、温まった瓦や壁体が熱源となり対流や伝導によって室内を暖めます。今はこの対流と伝導による熱の伝播は遅らせる措置として断熱材を用いているのです。断熱材も物質ですので、時間を掛ければ伝導や対流によって熱は伝わります。伝わる時間を遅らせているだけなのです。
もっと、効果的に考えると瓦や壁体を輻射熱から遮断してやれば、室内はもっと快適になるはずです。
遮熱性の高い素材で屋根や壁体を造ればいいのです。
では、遮熱性の高い素材にはどんなものがあるのでしょうか。意外かもしれませんが、金属が遮熱性が高いのです。地球を取り巻く宇宙空間は、日が当たれば二百度を超え、日影はマイナス百数十度の極限の世界です。しかし、ハヤブサには断熱材は使われていません。表面を覆っていたのはアルミで出来た箔です。アルミ箔は赤外線を99%カットするのです。輻射熱を遮るには金属が効果的です。
しかし、銅鍋やアルミ鍋があるように、伝導熱や対流熱は簡単に通してしまうため、宇宙空間以外では効果を発揮出来ません。
雪山で遭難対策用にアルミシートが開発されていますが、あれも素裸になってシートに包まっても意味がありません。対流・伝導を遅らせる断熱材(防寒服)と合わせて初めて効果が表れるのです。
つまり、対流・伝道に無力な遮熱材は、瓦や壁と云った他の素材と切り離して、対流熱・伝導熱を伝えない工夫をしてもっぱら輻射熱を遮断することのみに専念させてやることが必要となります。そうしなければ金属鍋と同じ状態で熱がどんどん通過してしまいます。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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