(続き)・・次に挙げられるCAM(補完・代替医療)としては「温熱療法」があります。ガンが本質的に熱に弱いという性質を利用して、ガン病巣や全身に熱を加えてガンの縮小を狙う治療法です。逆に言うと熱の少ない状態、すなわち低体温は、ガンの発症や増大を招きやすいといえます。体温が1℃下がると免疫力が30%以上も低下し、反対に体温が1℃上がると免疫力が5倍以上にもなると言われています。
ガン細胞は酸素を使わずにエネルギーを産生する「嫌気性解糖」に依存しているため、血流が良くなる高体温ではガンの生存に不利です。実際にガン患者がマラリアや丹毒で高熱にさらされた結果、ガンが消失したなどという臨床報告が多数あります。我々の生活実感でも、お風呂にゆっくり入ると誰でも体調が良くなるものです。またガン患者が温泉で湯治をしてガンが小さくなった、などという話はよく聞きます。
医療レベルでは、ある固有の波長の電磁波を体の深部に向けて放出することで深部体温を上げる「深部加温療法」が普及してきています。ガン病巣が体の深部にある場合でも、その部位を狙って電磁波を放出し、ガン病巣付近の体温を40℃前後に上げてやるのです。それでいて皮膚表面の温度はさほど上がりません。この治療法によって免疫力が向上し、またガンの病巣が高温に耐え切れず縮小もしくは消失します。
全身を温める治療も効果的です。「岩盤浴」では床温45度前後、室温38℃前後に温めた部屋に40分くらい横たわり、体を芯までじっくりと温めます。その結果、体全体が無理なく温まって免疫力や代謝が向上します。それによってガンに対する各種療法の効果が上がるのです。岩盤に微生物培養液を混入した「還元陶板浴」では岩盤浴の効果がさらに高くなり、ガンに対する縮小効果が認められています。
岩盤浴の効果とラドンガスの効能を併せ持つ治療法が「ラドン浴」です。ラドンは放射性核種であるラジウムが壊変して生じるガス状の物質で、人間が吸入すると肺から吸収されて血流に乗り、全身の臓器や組織に運ばれます。そこでアルファ線という強力な放射線を放ち、細胞に対して様々な良い刺激を与えます。例えばアルファ線は活性酸素を消去する酵素を誘導して、病気の原因となる活性酸素を速やかに除去します。
秋田県の玉川温泉は天然のラドン浴温泉として古くから知られており、多くのガンや難病の方々が湯治に通ってきました。温かい岩盤からはラドンガスが絶えず噴き出しており、湯治客は岩盤に体を横たえて体を温め、ラドンガスを吸入します。この治療法を応用し、いくつかのクリニックでは室温38℃のラドンルームを併設し、ガンや難病の方々の治療に取り組んで良好な臨床的成果を挙げています・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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