(続き)・・ガン治療に限らず、通常の西洋医学の範疇に入らない治療法は一般に「補完・代替療法(CAM)」と呼称されています。ガン医療の分野では、3大療法以外の治療法は概ねこのCAMに分類されます。日本では医療制度や健康保険制度との兼ね合いで、大学病院をはじめ大病院では3大療法以外のCAMを行なうのが極めて困難で、現実には一部の小病院やクリニックでのみ行われているのが現実です。
CAMには多くのものがありますが、優れたCAMの条件としては、多くのガンに有効で副作用が少ない、ガンが進行し転移している場合でも効果が期待できる、他の治療法との併用が可能である、耐性が生じず治療の継続ができる、治療そのものがQOL(生活の質)を向上させる、などが挙げられます。このような条件を兼ね備えた治療であれば、辛い副作用に耐える必要もなく進行ガンの治療に取り組むことが出来ます。
先ず挙げられるCAMとしては「免疫療法」があります。ガンの通常療法とりわけ抗がん剤で問題となるのが免疫力の低下で、そのためにかえってガンの増大を許すことになるのですが、ガン患者の免疫力を向上させる治療法を併用することによって通常療法の効果を高め、増大の危険性を減らすことが可能となります。この免疫療法は患者の免疫力を顕著に向上させることによって、ガン細胞を攻撃しようという新しい治療法です。
驚くかも知れませんが、我々の体の中では毎日、数千個ものガン細胞が発生しています。それにも関わらず健康な人がガンを発症しないのは、人体が自分の力でガン細胞をしらみつぶしに駆除しているからです。そのガン細胞を駆除するのは主として「免疫細胞」の役割です。免疫細胞にはいくつかあって、NK(ナチュラルキラー)細胞、CTL(細胞傷害性T細胞)、マクロファージなどが代表的な免疫細胞です。
例えば「高活性化NK細胞療法」では、血液中のNK細胞を採取し、特殊な培地の中で培養します。するとNK細胞の数が増えて働きが活性化します。すなわちガンをより殺しやすくなるのです。そのように増加し活性化したNK細胞を注射で体内に戻してやると、NK細胞が盛んにガン細胞を攻撃して縮小させます。実際に高活性化NK細胞療法で進行ガンの進行が止まった、あるいはガンが消失した、という報告が多数あります。
一方で「樹状細胞療法」では、リンパ球のうちのT細胞を「教育」する役割を持つ樹状細胞を採取し、ガンの抗原(タンパク質)で樹状細胞を刺激します。樹状細胞はガンの抗原を認識してT細胞に攻撃の指令を出す役割がありますが、そのガンへの認識能力を向上させます。そうしてガンの認識能力を高めた樹状細胞を体内に戻してやると、T細胞のガンへの攻撃性が上がり、ガンの縮小や消失に結びつくのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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