- 羽柴 駿
- 番町法律事務所
- 東京都
- 弁護士
対象:刑事事件・犯罪
- 羽柴 駿
- (弁護士)
- 羽柴 駿
- (弁護士)
このように一旦無罪判決が確定した元被告人を、全く同じ容疑で再逮捕や再起訴をすることは、日本国内では許されないことです。それは、日本国憲法39条が「何人も、・・・既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。」と明記しているところで、これを「一事不再理の原則」といいます。
なお、これと類似の原則として「二重の危険の禁止」というものがあります。一旦刑事事件の判決(有罪でも無罪でも)を受け確定した被告人は、もう一度同じ事件について逮捕や起訴はされないというもので、日本国憲法39条が「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」と定めているものです。
このような一事不再理や二重の危険禁止の原則は、日本国だけでなく他の民主主義国でも必ずといって良いくらい採用されている刑事裁判の大原則です。基本的な国際人権条約の一つである「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)でも、「何人も、それぞれの国の法律及び刑事手続に従って既に確定的に有罪又は無罪の判決を受けた行為について再び裁判され又は処罰されることはない。」(14条7項)と、同様の原則を定めています。(この自由権規約には、日本もアメリカも加入しています。)
この原則は、ある市民が犯罪を犯したとして起訴されたものの、裁判で審理した結果として無罪判決が確定した場合は、同じ罪で裁判をむしかえされることがないように国家の処罰権を制限したものです。犯人と疑われた人物が半永久的に逮捕・起訴の恐れにさらされるという非人道的な事態が起きないようにするための制度で、無罪推定の原則と並んで刑事裁判における最も重要な原則の一つです。
(次回へ続く)