第4章 裁判官はなぜ怒ったのか(6) - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

羽柴 駿
番町法律事務所 
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

閲覧数順 2024年04月18日更新

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第4章 裁判官はなぜ怒ったのか(6)

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(第6回)

 それはともかくとして、Cさんの調書で初めてK子ちゃんの事故前の行動が明らかになりました。ダンプカーがターンした後、工事現場に向けて発進しようとした時、ダンプカーの右後輪後方地点(図面5のア地点)にK子ちゃんが立っているのをCさんは見ているのです。
しかし、その後のK子ちゃんの行動をCさんは見ていないといい、次に見たときにはK子ちゃんがダンプカーの左側後輪に轢かれるところだったといいます。K子ちゃんは、ダンプカーの右後輪後方(図面5のア地点)からいつ、どのようにしてBさんの目撃したブロック塀の角(図面5のイの地点)に行き、ダンプカーの直前に飛び出すことになったのでしょうか。それはCさんの調書でも明らかになっていませんでした。
 Y運転手は事故当日、現行犯人として警察官に逮捕されて警察留置所に留置され、取調べを受けました。
 そして調書の中でY運転手は、ガードマンの誘導に従い運転をし、事故を起こすまでK子ちゃんの事を全く見ていなかったことを供述しています。付近で立ち話をしている二人の女性(K子ちゃんの母親とその知人)には気づいており、注意もしていたのですが、不幸な事にK子ちゃんには全く気がつかなかったのです。又、Y運転手はこの調書の中で「発進の際は、身を乗り出してでも前の真下や斜め右下までよくみていればこの事故は防げた」と供述させられています。訴因が発進時の前方注意義務違反として構成されていることからも分かるように、警察側はこの事故は発進の際の運転手の不注意によるものと見ていたことが分かります。同じような供述は、Y運転手の検察官に対する供述調書にも記載されており、捜査を担当した検察官も、警察の見方をそのまま受け入れていました。

                 (次回へ続く)