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−拒絶査定不服の審判における補正の却下の決定が取り消された事例−
河野特許事務所 執筆者:弁理士 河野登夫
抄 録
昭和61年の特許出願を原出願とする分割出願に関して,補正の適否が争われた事案である。本件出願には,補正の制限に関する規定が大きく改定された平成5年法は適用されず,旧法下で,補正の適否が「要旨の変更」の有無によって判断される。
拒絶査定不服の審判の中で補正の却下の決定がなされたので,その決定の取消を求めて知財高裁に提訴された。特許請求の範囲に追加記載された補正事項が,当初明細書に記載のない事項であり,自明の事項でもなく,また,当初明細書の記載からは起こりえない事象であると認定されて補正が却下されたが,裁判では逆の判断がなされ,却下の決定が取り消された。
当初明細書に記載がないなどとする審判における認定に誤りがある,との本件裁判での判断は正しい。しかしながら補正事項には,当初明細書に記載されている事項を超える内容を含んでいると考えられるから,補正が要旨の変更ではないとする判断には疑問が残る判決である。
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