- 真鍋 貴臣
- 香洋ファイナンシャル・プランニング事務所 代表者
- 香川県
- ファイナンシャルプランナー
対象:お金と資産の運用
日経電子版に、次のような記事が掲載されていました。
【抜粋開始】
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF2800R_Y2A920C1SHA000/?dg=1
中国景気の失速が世界経済を揺るがせる一方、米景気に光明が見え始めた。2008年のリーマン・ショック以来、米国から中国に移ったといわれた世界経済の担い手。立場は再逆転したのか。
■石化銘柄の異変
メリルリンチ日本証券で化学業界を担当するアナリスト、榎本尚志氏が異変の兆しを感じたのは今年4月末のことだ。
中国景気に左右される石油化学製品の市況が悪化し、住友化学の株価下落が目立ち始めた。同時に信越化学工業からは、建材用の塩化ビニールを製造する米国子会社の業績が急拡大しているという情報が飛び込んだ。
中国関連株の住友化学と米国関連株の信越化学。株価は明暗を分けた。信越化学は6月以降上昇に転じたが、住友化学は4月末から約4割下げ、9月には28年ぶりの安値をつけた。「米中どちらに収益を依存しているかによって、企業収益は二極化した」。榎本氏は今、投資家にこう説明している。
中国は、リーマン危機後に4兆元(約50兆円)に及ぶ景気刺激策を打ち出し、世界景気を救った。国内総生産(GDP)も日本を抜いて世界2位に浮上。景気のけん引役の交代を印象づけた。
だが、米国株の動きを上回っていた中国株も今年は低迷続き。市場は「米中再逆転」を意識しているようにも見える
実際、今の中国は世界景気の回復期待を弱める存在だ。英バークレイズは先週、今年の世界の成長率予想を6月の3.5%から3.1%に引き下げた。中国は8.1%から7.5%への大幅な下振れ。9.2%だった昨年から急減速する。
「中国問題を甘く見てはいけない」。米物流大手フェデックスのフレデリック・スミス最高経営責任者(CEO)の先月の発言だ。中国は輸出も消費も期待を下回った。世界的に物流が停滞すると読み、同社は業績の見通しを引き下げた。
生産設備の過剰と製品のだぶつき。4年前に世界を喜ばせた刺激策の副作用が今、皮肉にものしかかっている。人件費の上昇による企業の採算悪化を含め、単なる景気循環を超えた構造要因も表面化している。
政治リスクも加わった。「指導者の交代期に入り、景気への対応も思ったより本格化していない」。JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは警戒する。それだけに、米国にちらつく薄日への市場関係者の期待は大きい。
バブル崩壊の核心だった住宅市場には、底入れの兆しが見えてきた。S&Pケース・シラー住宅価格指数も米連邦住宅金融庁(FHFA)の全米住宅価格指数も、価格の反転上昇を告げている。
そして株価。5月まで低迷していたダウ工業株30種平均は、米連邦準備理事会(FRB)の追加金融緩和への期待もあって1割近く上げた。
住宅と株の値上がりは、家計が持つ資産の価値を高める。米著名エコノミストのエド・ハイマン氏は先週、7~9月だけで資産価値が合計2兆ドルも膨らみ、米GDPの7割を占める消費を刺激すると予測した。
だが、米国が世界経済のけん引役に返り咲くと言う専門家は少ない。今年の米成長率の予想は大方が2%強どまり。年末には、減税の期限切れなどで緊縮財政に追われる「財政の崖」が来る。
■カギは新興国の消費
他の国はどうか。「今後10年単位で世界を引っ張るのは新興国の消費だ」。モルガン・スタンレーの新興国株ストラテジスト、ジョナサン・ガーナー氏は力説する。都市化、人口増、企業の競争力向上。同氏の見通しを支える要因に説得力があっても、新興国は世界に散らばっている。特定の国が世界の成長を担う構図ではない。
リーマン危機で、米一極集中の時代は終わった。今露呈しているのは、中国に過度に期待することの限界だ。欧州も日本も混沌としている。世界の経済は「極のない時代」への道を着実に歩んでいる。
(編集委員 梶原誠)
【抜粋終了】
21世紀は中国の時代だと言われていました。
それは、20世紀を牽引してきた先進国諸国はこれまでのような高成長を維持する事が難しいこと、また成長期にある中国における中間層の拡大が、中国という国に消費を生む事により経済成長を促す事が理由として挙げられると思います。
一方、アメリカをはじめとした先進諸国は、円熟の裏返しとして産業構造や人口構造が高コスト体質になりやすいこと、為替高が国際競争力を削いでしまう事などから、成長期の様な高い伸長率を望むことは難しく、「成長期にため込んだ資産をいかに目減りさせずに乗り切るか」がポイントになってきます。
ちなみに、国家は成長⇒円熟⇒衰退⇒成長のサイクルを繰り返し、成長国家もいずれは円熟国家に、円熟国家もいずれは衰退を通じて成長国家にかえって行きます。
これは、全ての国家・組織に課せられた運命であり、生物が生まれてから死ぬまでのサイクルに似ています。
そういう意味で、本来であれば「世界の極」は中国に移ってゆくはずでした。
ところがここ数年、リーマンショックに端を発した世界的な信用不安の波は、「世界各国が競って金融緩和を推し進める」という異常な事態を生み出し、その副作用としてのインフレーションを招いただけではなく、信用収縮を止めることが出来なかったという事態をもたらしました。
資本主義経済にとって、最も忌避すべき出来事は「信用収縮」です。
「信用収縮」とは、ざっくりと言ってしまえば「今日より明日が良くなるとは思えない」ということで、この状態に陥ると人は「将来に向けた積極的な投資よりも、万が一の場合に備えていつでもお金を使える状態にして手元に置いておこう」と考えます。
リーマンショック後、各国の金融政策により生み出されたお金は、成長著しい中国に流入していきました。
また、中国も中間層の拡大により、その成長にふさわしい消費と成長を行い、GDPの総額は日本を抜いて世界第2位へ上りつめ、同時に世界ではギリシャの信用問題が発生した事によりユーロという極めて大きい共同体に対する信用不安へと発展してゆきました。
この「経済成長への期待」と「信用の不安」がほぼ並行して起こった事で、中国はバブル経済に陥ったのですが、現代の様なグローバル社会においては国家間の経済事情は密接に関係しており、世界的信用不安に引きずられる形で中国のバブル経済は、その自力の弱さを露呈し始めました。
本来であれば、まだまだ成長段階にあったはずの中国経済は、世界的な信用不安の中に取り込まれてしまったため、逆に社会的基盤の弱さを露呈してしまうという不幸に見舞われたのです。
それが本記事にある「中国問題」であり、日本との間の「尖閣問題」により、今後より一層の加速が予想されます。
(信用リスクの裏側にあるものは心理的なリスク回避性向であり、政治的経済的問題はこれをより一層深化させます。)
アメリカは自国回帰を推し進めていますので、記事にもあるように今後しばらくは世界の牽引役に戻ることはないでしょう。
(年末には「財政の壁」問題が待っています。アメリカも大きな財政問題を抱えたままです)
アメリカ、中国、ユーロ、日本という巨大経済圏のいずれにも「成長期待」が望めない現在、各国の金融政策によりダブついたマネーは行き先を探しています。
かつてのように「眠れる獅子」のいない現在、この信用不安を打破してくれる「成長国」は、一体どこになるのでしょうか。
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