3 寄与分の制限
寄与分が認定される場合,寄与分は,被相続人が相続開始時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない(民法904条の2第3項)とされているだけで,これ以外に上限を制約する規定はありません。
また,寄与分は遺留分減殺請求の対象になりません。その理由は,減殺請求の対象である遺贈又は贈与には当たらないこと,遺留分減殺請求の制度が被相続人の財産処分に対する制限にすぎず,共同相続人間の公平を図ることを目的とした寄与分の制度とは別個のものと解されるためです。
もっとも,寄与分が遺留分を侵害しても違法にはならないというにすぎず,かかる遺留分を侵害するような寄与分額を定めることは多くの場合,妥当な処理とはいえないと思われます。寄与分の認定に当たり,他の相続人の遺留分侵害の有無についても考慮すべきであるとする裁判例(東京高決平成3・12・24判タ794号215頁)があります。
なお,寄与分は共同相続人間の協議により,あるいは家庭裁判所の審判により定められるものでありますから,遺留分減殺請求訴訟において,寄与分があることを抗弁として主張することはできません(東京高判平成3・7・30家裁月報43巻10号29頁)。
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