(続き)・・さてそのように合併症がらみで恐れられている糖尿病ですが、近年なぜ患者数が急速に増加してきているのでしょうか。病院や医学会、健保組合、スポーツ施設、そして厚生労働省などでは、糖尿病撲滅を目指して熱心な研究や対策が施されています。それにも関わらず、なぜ増加の勢いが止まらないのでしょうか。糖尿病が蔓延している原因を追究するためには先ず、糖尿病が発症する要因について考えてみる必要があります。
生活習慣病という新たな分類からも分かるように、糖尿病を発病する主な要因は生活習慣、とりわけ「食生活」にあるとされています。現代は「飽食の時代」と言われ、昔は贅沢病とされていた糖尿病は、少なくとも先進国に於いては誰でも発症する可能性のある病気の一つとなっています。食材が豊富になり交通が発達した先進国では、主に食べ過ぎと運動不足によって、肥満とともに糖尿病が著しく増えてしまったのです。
そのような現状を受けて、毎日の食事で食べる「量」を減らす試みが至る所でなされています。代表的な取り組みが「カロリー制限」で、糖尿病またはその疑いのある患者に対して摂取するカロリー数に制限をかけるのです。指定するカロリー数は、身長から割り出された標準体重と、その人の日常的な活動量などを勘案して計算されます。例えば「あなたは一日当たり1800キロカロリーにしなさい」といった具合です。
極端な例として、ある大食漢の人が一日に3000キロカロリーも食べていた場合、もし1800キロカロリーに減らすとなると、食事量を何と4割も減らさなければなりません。この場合、食事の中のどの食品を減らすことになるかというと、優先的に減らすべきはカロリー数の多い食品です。代表的なものとしては肉や魚、揚げ物、炒め物など「高カロリー」な食品群が挙げられます。もちろんご飯などの主食も減量の対象です。
具体的には、主食であるご飯やパン、副食である肉や魚、野菜、豆類などを「バランスよく」減らすのですが、その中でも高カロリーである肉や魚などを減らす割合を多くすれば、より効率的なカロリー削減が可能となります。そのために肉や魚などを野菜などに比べて余計に減らすことが一般的です。結果としてカロリー制限された一人分の食事というものは、当然ながらボリュームの少ない、物足りない食事となりがちです。
そのような「カロリー制限食」の特徴から、糖尿病の食事療法に取り組む患者はたいへんな欲求不満を抱くものです。人間には「食べたい」という本能、つまり食欲がありますが、それを抑圧された結果、大きなストレスを感じるのです。頑張って食事制限に取り組んでも次第に我慢が限界を迎え、ある日を境に堰を切ったように食べ始めます。そのようにして「リバウンド」に至り、血糖値が急上昇することが多いものです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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