日常の外来業務で、糖尿病の方がとても増えてきていると実感しています。現に糖尿病の患者数は2011年にとうとう1000万人を突破し、国民のおよそ10人に1人が罹るという、まさしく日本の国民病の代表格となっています。一昔前は「成人病」の一つとされてきましたが、近年では小児の糖尿病が急増し、もはや大人だけの病気ではないと考え、新たに「生活習慣病」の一つに挙げられるようになりました。
糖尿病とは血液中の「糖質」の量が増える、つまり血糖値が上昇し、様々な合併症をもたらす慢性疾患です。血糖値が高くとも多くの場合、目立った自覚症状がありません。そのために発見と適切な対処が遅れ「合併症」が次第に進行していきます。特に合併症が起きやすいのは眼の網膜、腎臓、そして神経で、これを「3大合併症」といいます。これらの組織は毛細血管が発達しているため、高血糖の影響が現れやすいのです。
糖尿病を早期に発見して適切に治療さえすれば、これら合併症が発生することは原則としてありません。それに対して高血糖を放置した場合、数年で合併症が発生します。当初は軽微な変化から始まりますが年々確実に進行していき、最悪の場合は失明や人工透析、足の壊疽から切断の憂き目をみるといった悲劇が待っています。それによって人生が暗転してしまう人は多く、合併症が糖尿病の最大の問題点なのです。
また糖尿病が怖いのはそのような3大合併症だけではありません。高血糖によって著しく動脈硬化が進むために、脳梗塞や虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症などの発症が促進されます。実際に、脳梗塞や心筋梗塞の発症率は、一般の2倍から3倍またはそれ以上に上ります。さらに免疫力が低下することも影響して、各種ガンに罹りやすくなり、やはり一般の2倍から3倍の発症率となっています。
日本人の死因統計をみると、1位がガン、2位が心臓病、3位が脳血管疾患という順位で、糖尿病は死因の上位に入っていません。しかしながら、これら3大疾病で死亡する人のかなりの割合が糖尿病を抱えていることが分かっています。仮に糖尿病を撲滅できたとすると、3大疾病で死亡する人は大きく減少することは確実です。このように糖尿病は他の重大な病気の引き金になる、「静かなる殺人者」とさえ言えるのです。
糖尿病に罹ることは、各種合併症や死に至る病気の引き金になるため、今や多くの人が恐れています。また企業などの組織に於いても、その構成員が糖尿病を患うことは、通院や入院などに伴う休業や退職などによって、組織としてのパフォーマンスが低下することにつながります。そのために社員の健康診断や健康教育などによって、少しでもそのリスクを減らすことに躍起となる企業が増えてきています・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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