- 塚本 有紀
- フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
- 大阪府
- 料理講師
対象:料理・クッキング
- 黄 惠子
- (料理講師)
7月の料理連続講座(続き)
ラプサン・スーチョンで燻製にした鴨胸肉とジロール茸のソテー filet de canard fume au the chinois
諸事情で、あちこちのフィレの端っこからスライスを取ったので、ちょっとばらばらな盛りつけですが・・。
鴨肉は、シャランの窒息鴨を使いました。窒息鴨は全体に赤黒く血が回り、身は柔らかく、ジューシー。その手法はナントで発祥し、シャランに伝わったものなのだそう。職人さんの技術レベルによって、血の回り方が違ってきます。もちろん赤く血が回っているほうがよりよいものです。
なかでも食材としてとくに評価の高いビュルゴー家の鴨を使いました。
カソナードを着火材にして、ラプサン・スーチョン、オレンジの皮、シナモンで燻製にします。
ラプサンは、中国福建省のお茶で、松の生木で燻した茶葉です。かなり強い個性のお茶で最初はびっくりしますが、さすがにヨーロッパの人が好きそうな強さです。しかし慣れるとけっこうおいしいもので、ミルクティーもなかなか。この茶葉を燻すと、強い煙の香りが部屋中に漂います。
半分だけ燻したところ。
皮目がきれいな茶色に。蓋を取ると、ラプサンの強い香りとともに、ふわっとオレンジの香りも漂います。上手にできると、鴨肉からオレンジの香りも漂います。
付け合わせには、ジロール茸とじゃがいものソテーを添えます。
ジロール茸girolleはアンズ茸と訳される、夏から秋にかけてのきのこです。エシャロットやじゃがいもとともに、がちょうの油graisse d'oieでじっくりと炒めます。
ビュルゴーの上品な鴨の味と、松を彷彿とさせる煙の香り、オレンジのニュアンス。とてもおいしくいただきました。
そして人数の都合上、1枚は同じくシャラン産の窒息鴨のフィレ(つまりビュルゴー家でないもの)も取り寄せました。同時に焼いて食べ比べをすると、明らかにビュルゴーのほうがより上品、より柔らかく、芳香成分もよく吸い込み、おいしかったのです。これまでもおいしいとは思ってきましたが、厳密にその「差」を感じることができました。
「やっぱりそれだけのことはある」というのが実感。素晴らしい食材です。
本日のチーズとワイン
ワインは鴨に合わせ、ブルゴーニュ、コート・ド・ボーヌのサントネイSantenayを
チーズはオーヴェルニュのサレールSalers(AOP)
サレールは夏の間だけ作られる農家製のチーズです。強く濃縮したアミノ酸の旨味と塩味があり、ちょっとだけで満足できる味わいです。とてもおいしい状態でした。
シャンパンのジュレ gelee au champagne
シャンパンの泡を消さないようにそっとジュレを作り、底にフランボワーズのピュレと、いちごやぶどう、白桃、さくらんぼを入れています。
ノーブルな味と、パチパチと小さく弾ける食感が楽しめます。
もしも失敗すると、固まらない部分がでてきたり、泡が完全に消えたり、残念な結果になってしまうのです。毎回それなりに緊張しながら、慎重に作ります。
使ったのはパイパー・エドシックPiper-Heidsieck
過去には他にもモエやランソン、ポメリーなど試しましたが、パイパー・エドシックが私の一番のおすすめです。泡が一番強く、きりりと辛口だからです。
さて添えはビスキュイ・ローズ・ド・ランスbiscuit rose de Reims
ランスの地方銘菓で、シャンパーニュ地方に行くと、そこここのお菓子屋さんやお土産物屋さんで見かけるピンク色のビスキュイのことです。以前はシャルルドゴール空港にもお土産として売られていましたが、最近お土産売場はぐんと洗練されてしまったので、どうなのでしょう。
シャンパン・ロゼの色が付けられています。ものすごくおいしい! というものでもないのですが、素朴に穏やかにおいしいもの。シャンパンにちゅるっと浸して食べることになっているのが素敵!
これがビスキュイ・ド・ランスの型
スタッフ久我が貸してくれました。フィナンシエの型より一回り小さく、半分くらいの高さです。
このお菓子はお菓子屋さんが作るものというよりは、量産品なので、型がパリに売られているとは考えてみたこともありませんでした。朝から
「私も欲しい! 欲しい!」
と叫んでしまいました。
今回はジュレなので浸す事ができませんから、軽めに1回焼き(ビスキュイとはそもそもは「2回焼いた」という意味)にして、ふんわりのままにしています。
私は色は入れずに、最後にフランボワーズのパウダーをふることにしています。
(本当の色は、フォシエ社FossierのHPをどうぞ)
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