話題のNHKドラマ「はつ恋」。意外に切なくなれない理由

2012-07-13 13:19

初恋の人に、命を救ってもらったらーー
初恋相手との甘くしかも鉛のような重い記憶を抱えながら、生きてきたとしたらーー
助けてもらった初恋相手が、逆に自分の患者になったとしたらーー

初恋の人と再会するだけでドラマが出来上がるのに、
NHK「はつ恋」は、このようにテンコ盛りな恋愛ドラマだ。
最初はチラチラっと見ていたのだが、
かなり話題になっているというので、DVD録画で観てみる。
出産後の木村佳乃がヒロイン。痩せすぎで、あまりない色気がさらにダウンしたが、
リハビリのST役は、彼女から醸し出されるあの堅さと妙にマッチしている。
相手役の伊原剛は、ちょっと、太ったが、傲慢だが繊細な中年男性にぴったり。
最初は、木村のぎこちない演技が、不協和音として渦巻いていたが、
回がかさみ、共演の度合いが深まるつれて、だんだん二人の絡みシーンが切なくなってくる。
でも、ドラマの世界にどっぷりつかれないような
妙に冷めているこの感覚は何なのだろう。

二人がやっと結ばれるシーンに、
「遅いなあ。もっと早くならなかったのか？」としらじらとしてしまった。
過去に付き合っていた男女が関係を取り戻してからが、ドラマとして盛り上がっていくのに、
次回で、もう最終回。
このドラマではよりを戻すとか戻さないとかの過程を描きたいのだろうか。

シラジラとしてしまう原因が、ヒロインの夫が、古臭いのだとわかった。
俳優の名前を知らないが、おそらく30代後半だろう。
でもまるで50代の男性のようなキャラクターなのだ。
自分から惚れて結婚したのに、嫉妬にかられて
「オレ以外の男を思っている女と一緒に暮らせない」と、妻を追い出す。
家事も一切しないし、今どきの若い男性ではない。
愛する妻を助けてくれたドクターだからと、必死に嫉妬を隠してきたが、
ドクターが脳卒中で失語症になってから怒鳴りつける。
自分が身体的に優位になった途端に、どやしつけるなど、男としてサイテー。
現実の男は、ほとんどがそうなのかもしれないが、
「切ない」という気持ちを掻き立てれらないのは、
夫のキャラが「嫉妬」の一言だから。
もし夫が、ドクターに感謝と敬意の念が多くなるのなら、
板挟みとなってさらに苦しむことになる。
そこに「切なさ」という恋の醍醐味が積み重なっていくのではないだろうか。