- 松山 淳
- アースシップ・コンサルティング コンサルタント/エグゼクティブ・カウンセラー
- 東京都
- 経営コンサルタント
対象:キャリアプラン
- 宇江野 加子
- (キャリアカウンセラー)
- 冨永 のむ子
- (パーソナルコーチ)
日に新た(2)
約一年前・・・。
遼太の勤める中堅文具メーカーは、
競合他社が業績を伸ばす中で、
定番商品によりかかった経営から脱却できず、
景気回復の追い風をとらえそこねていた。
危機感をもった大貫社長は取締役会で何度もアイディアを求めたが、
現状を打破する戦略を生み出せず時を無駄にしていた。
役員の中には、新製品開発に対する投資コストがかさむことで、
経営状態がさらに悪化すると、現状維持を訴える者もいた。
(いつからこんな会社になってしまったのだろう)
営業鞄を手にして朝から晩まで街を歩き回り、
ぼろぼろになった革靴が勲章だった時代を思い起こし、
一代で会社を築き上げた社長は、
会議で顔をそろえる役員たちにきづかれぬようにうなだれ、
顔をゆがめた。
社長直轄の新製品開発プロジェクトが発足したのは、
それから間もなくのことで、
「我が社に新しい風を起こせる人材求む」
と、古くさいリクルート広告のようなキャッチコピーが
イントラネット上に流れた。
入社十年未満の若手社員が対象であり、最後
「上司に相談する必要なし、直接私に返信をするように」
と、社長の名前が記されていた。
若手社員のほとんどは半信半疑で、
中間管理職の半分は「そんな話は、聞いてない」と気分を害し、
社長に反目する役員の数名は部課長を呼び出し
「応じる必要ない」と釘をさした。
製品開発部で働くことが入社時の希望だった総務部でくすぶる遼太は、
社長のメールを見ると
「ぜひ、プロジェクトに参加させ下さい」
と、迷わず返信をした。
年度末を前におこなわれる人事査定面接の度に、
異動を懇談し続けてきたが、聞き入れてもらえず不満が募っていた。
その日の内に、そりの合わない総務課長から小会議室に呼び出された。
*1
*1この物語はフィクションです。 登場する人物名・団体名等は実在のものと一切関係ありません。