- 井上 みやび子
- すぐ使える株式会社 代表取締役
- 東京都
- Webエンジニア
対象:システム開発・導入
- 清水 圭一
- (IT経営コンサルタント)
- 清水 圭一
- (IT経営コンサルタント)
4月23日はサンジョルディの日、キリスト教の聖人の日ですが、日本では「本の日」となっています。
パレンタインデーにチョコレートを贈り合うように本を贈り合う...というのが「本の日」制定の狙いだったのでは無いかと思いますが、本はチョコレートほど後腐れ無く(?)ないので、本をプレゼントするというのはちょっと勇気がいりますね。また、貰う方もどきどきしてしまいそうです。...考え過ぎでしょうか。ちなみに本場スペインでは赤いバラを贈るという事で、発祥の地カタルニア地方では年に売れる赤いバラの約40%がサンジョルディの日に売れるそうです。
それはさておき、本の日に合わせて「東北の子供たちに児童書を贈ろう」という事で寄贈を受け付けて下さる企画があったので、1冊持って行きました。と言っても、身近に子供も姪甥もいないので、今更児童書の仕入れはありません。そこで家の段ボール箱をひっくり返してみたら出てきました。
「サンタクロースっているんでしょうか」偕成社 東 逸子 (イラスト)、中村 妙子 (翻訳)
往年の名著だと思いますので今でも増刷されていると思いますが、私が持っていたのは 1977年版、1979年第11刷。出版社の郵便番号が3桁表記です!! 紙は少し分厚くざらついていますが印刷は奇麗に乗っているし(当時はまだ、今主流のオフセット印刷では無いのかもしれません)、表紙は布張りです。紙の書籍ってすばらしいと思う瞬間です。
引越の度に本を含めたくさんの物を捨てて来ましたが、これは取っておいたって事はああ自分にとって大事だったんだな、というひとしきりの感慨。そして、これをあげてしまうのは正直切ないなあとも思いましたが、同時に、これからの子供たちに自分が体験した事を分けてあげたいと心から思ったのでした。
さて、ここからはお仕事モードです。
本を電子化しようとか著作権保護(著作物の配布に伴い著作者にお金が入る仕組み)は10年くらいでいいんじゃないかなど、出版にまつわるいわゆる最近の流れを推進している派は根底でこの分け合いましょう精神が強いんだろうなと思います。
私の場合基本的な読書体験がまだ紙の世代ですので、「本を物理的に所有する」という事と「中に書いてある情報を得る」という事が一緒くたになっています。このため、物理的に固有の形を持たない電子ブックはどうにもこうにも読んだ気がせず、他人(次の世代の方達)にも同じような体験をしてもらいたいと思うのですが、それはそこそこ豊かで平和で紙の本を印刷して流通できる国の話。
書写だった知識の流通が印刷技術で格段に広まったように、もはや電子化とインターネットという手段を得た今、それで情報を広く共有しようという流れがあるのは考えてみれば当たり前なんですね。実物の絵画でなければ写真や模写を見てもそれは全く意味が無いのかといった事と照らし合わせてみると分かりやすいかも知れません。
これで形式に関する老人のノスタルジーを措いておけるとして、あと考慮しなければならない問題として残るのは以下の点でしょうか。
A.「私はこの情報を誰しもに共有して欲しい訳ではない」という著作者
B.「この情報はなるべく隠しておきたい/独占したい」という先行者
C.「共有された分に応じてお金をくれなきゃ嫌だ」という権利者
この辺りを具体的に考えて行くと即、個人・会社の権利、国家的な問題、貿易の問題等々、かなーり複雑になってきてしまいます。
AとBの限定された人とだけ共有したいというのは、おそらく紙でも電子でも1回他人が読める形にしてしまったらもう無理なんだろうと思います。諦めて下さい(笑)。(私信などでも、これは昔からですが、著名人の場合は死後出版される事もありますね。)絶対に漏らしたくない情報だったら対面・口頭・記録無しで伝えていくしかない。...スパイみたいですね。
Cは技術の問題ですが、拡散していった電子データの複製の数を制限する/正確に数えるというのはやはりかなり難しい。Amazonのような巨大な会社がデータコントローラーとして君臨して複製数を管理するというのは今の技術からするとある意味妥当な解決なのですが、やはり感情的にはNGな気がします。Amazon儲け過ぎ。営利企業ではない国際機関を作ればいいのか?理想論としては悪くないかもしれませんが、中で絶対国際闘争起きますね。
そうすると、一次配布(著作者および最初の配布実務に関わった人々が自ら配布数をコントロールできる範囲)で著作・頒布の労に見合うと思え、また、全体として著作継続を可能にする程度のお金を取って後の配布は目をつぶる、逆に、買う方はなるべく中間流通者ではなく原著者およびその周辺、および自分にその存在を教えてくれた人(宣伝など)にリターンがいくように敬意を払うべきだという環境を醸成するような教育に力を入れるというのが一番近道という事になるような気がします。
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