- 増井 真也
- 建築部門代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
この住宅はもともと建っていた古い住宅の和室を保存した棟と、新築3階建ての棟の二つの棟から成り立っている。はじめての打ち合わせのときにこの住宅を訪れたとき、そこには妹さん御夫婦とお姉さん、そして高齢のお母さんがいた。お母さんがお嫁に来たときから、姉妹が育ったころに至るまでの長い長い数十年間にわたる昔話を聞いた。写真に写る和室である。
そこには、その場所にそぐわない古い像が置かれていた。誰の像かと思えば、亡くなったお父さんのものであった。姉妹のうち妹さんはしばらくよそに住んでいた。そして今回、またこの土地に、大家族で住みたいというご相談であった。設計にあたり、その土地の記憶、家族の記憶を残せないかの考えが頭をよぎった。結果、和室の保存という答えに行き着いたのである。