- 清水 圭一
- 日本クラウドコンピューティング株式会社
- 東京都
- IT経営コンサルタント
対象:システム開発・導入
- 清水 圭一
- (IT経営コンサルタント)
- 村本 睦戸
- (ITコンサルタント)
東日本大震災に学ぶ、中小企業におけるIT災害対策の考え方 その2
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大企業は無傷、中小企業は壊滅的な被害、その理由は?
日経コンピューターによる東日本大震災ITシステムの被害状況の調査記事(資料3)によると、そのほとんどは、地震による通信回線の断絶、停電によるITシステムへの電力供給のストップ、地震・津波によるPC、ATMなどの端末などの流出・破損被害によるものでした。その影響で地震発生から数日間は、ITシステムが機能不全に陥りましたが、主要な部分は、津波による被災地域外にある堅牢なデータセンター内にある為、数日のうちに、大部分は復旧し、致命的な被害はほとんどありませんでした。
ITシステムは、全体を司るホストコンピューターと言われるものさえ無事であれば、もっと正確に言うと、ホストコンピューター内のデータさえ無事であれば、通信回線や電力供給がストップしても、ホストコンピューターのデータ格納機器以外のハードウェアやそれに繋がる端末が破壊されようとも、短期間で修復が可能なレベルの被害しか受けることはありません。それは、ITシステムにとって一番重要なのは、「データ」だからです。そのデータさえ無事であれば、多少、他の問題があっても、致命的な被害には及ぶことはありません。データ以外の、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどの大部分は、時間とお金さえあれば、何とか元に戻すことは出来るからなのです。
しかし、時間とお金があっても、元に戻らないもの、それがデータなのです。江戸時代の商家では、火事になると、品物よりも真っ先に大福帳と呼ばれる売掛金や得意先が書かれた帳簿を持ち出し、井戸に投げ込んで、火事が収まったたら、それを引き上げ、それを元に商売を再開しました。現代の企業も同じ様に、物やお金以上に、大福帳にあたるビジネスデータが重要なのです。
データが消えてしまうと、バックアップデータや、それの大元になっている帳票などがなければ、どんなに費用や時間、労力をかけても絶対に戻ることはありません。つまり、データ消失は、ITシステムにとっては、最悪の事態であり、企業からすると致命的な損失となるのです。
今回の東日本大震災では、この致命的なデータ消失を起こしてしまう事態が自治体で発生しました。岩手県陸前高田市、岩手県大槌町、宮城県南三陸町、宮城県女川町の自治体で、計約3万8600件の戸籍、住民基本台帳のデータが、津波によって、ITシステムをそっくり流されたり、水没したりして、データ復旧が不可能な事態になりました。
戸籍、住民基本台帳システムは、行政サービスを行う上で基本となる重要なITシステムですので、データのバックアップは取得をしていましたが、それを保管していた近隣の法務局まで津波の被害を受けてバックアップデータを失い、東京にある法務省に保管してあるバックアップデータから復旧する事態となりました。しかしながら、法務省にあったデータは、被災する直近でのデータではなく、2011年1月下旬までのものだけでした。その結果、データが無くなってしまった1月下旬から3月11日までのデータについては、復元できず、その間の戸籍情報は空白になってしまっているのです。
<次回に続く>
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