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対象:特許・商標・著作権
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米国特許法改正規則ガイド (第1回)
第1回
河野特許事務所 2012年4月16日 執筆者:弁理士 河野 英仁
1.概要
米国特許商標庁(以下、USPTO)は2012年1月初旬に米国特許法の改正に伴う改正規則案を公表した。このうち、日本企業にとって重要な
(1)情報提供制度(AIA: America Invents Actセクション8)、
(2)査定系再審査(AIAセクション6)、及び、
(3)発明者の宣誓書または宣言書(AIAセクション4)
について新旧規則を対比しながら解説を行う。
公表された規則に対しUSPTOは意見を募集しており、(1)及び(2)については2012年3月5日、(3)については2012年3月6日までに意見をUSPTOに提出する必要がある。
なお、その他の規則についても順次公表され次第レポートする。
2. 情報提供制度(AIAセクション8)
(1)改正の趣旨
改正前においても情報提供制度は設けられていた(規則1.99)。
しかしながら、提供できる時期は出願公開後の2ヵ月内に限定されており、特許及び刊行物の提出数も10に限られていた。その上、単に特許及び刊行物が提出できるのみで、いかなる説明をも提出することができないという問題があった。
そこで、提出期間を大幅に拡大すると共に、簡潔な説明をも提出することができるように法改正[1]したものである(122条(e))。
米国特許法第122条(e)の新設に伴い、以下のとおり規則が改正された。
(2)情報提供の時期(米国特許法第122条(e)、規則1.290)
情報提供は書面で以下のいずれかの期日の早いほうに従ってなされなければならない-
(A)対象特許出願における米国特許法第151条(特許の発行)の規定に基づく特許許可通知の日が付与または郵送された日、または
(B)-
(i)USPTOにより米国特許法第122条(出願の秘密性;特許出願の公開)の規定に基づき、対象特許出願が最初に公表された日から6ヶ月後,もしくは
(ii)対象特許の審査において、審査官による米国特許法第132条(拒絶通知)の規定に基づくクレームに対する最初の拒絶理由発行日、のいずれか遅い方
すなわち、(A)(特許許可前)または(B)のいずれか早いほうであり、(B)(i)(公開6月)若しくは(B)(ii)(最初の拒絶)のいずれか遅い方となる(122条(e)(1))。
また、注意すべきは規則1.290(b)(2)(i)に規定されているとおり、情報提供の開始起点は米国特許法第122条(b)(出願公開)及び規則1.211(出願公開)の規定に基づき、USPTOにより公開された場合に限られる。つまりWIPO(World Intellectual Property Organization)による公開によっては起点が開始されないということである。
(3)提出書類
規則1.290(d)の規定に基づき、情報提供に際しては以下の書類を提出しなければならない。
(1)提出される書類のリスト;
(2)各リスト書類の関連性を示す簡潔な説明
(3)リストした書類、または、当該書類をリストするに至った部分の判読可能な写し。ただし、USPTOが要求しない限り、米国特許及び米国特許公開公報を除く。
(4)リストした書類のうち、審査官が考慮する非英語文書の関連部分すべての英語翻訳、及び
(5)提出を行う当該第三者により以下の事項を示す声明
(i)第三者は規則1.56(特許性に関する重要情報の開示義務)に基づく出願に関する情報を開示する義務を負う個人ではないこと、及び
(ii)当該提出が米国特許法第122条(e)の規定及び本セクションに従っていること。
(4)手数料
規則1.290(f)及び(g)によれば、第1回目の提出の場合、全書類が3以下、すなわち提出する文献数が3以下の場合、無料となる。また全書類が3より多く10以下の場合180ドル、11以上20以下の場合360ドルと、10書類毎に180ドルが加算される。なお、情報提供が2回目の場合、1以上10以下で180ドル、11以上20以下で360ドルと全書類3以下による無料サービスを受けることができなくなる。
(5)情報提供に対する特許出願人の対応
新情報提供制度の導入により、今後第三者から情報提供がなされることが増加するものと思われる。ただし、USPTOによる特段の要求がなければ、特許出願人は直接情報提供に対してアクションを取る必要はない(規則1.290(h))。
(6)新旧規則対比表
改正前 |
改正後 |
規則1.99公開された出願に関する第三者提出→(削除) (a) 係属中の公開された出願に関連する特許又は刊行物の公衆の一員による提出は,その提出が本条の要件を満たしており,その提出物及び出願ファイルが審査官に届けられたときに,その出願が未だ係属している場合は,出願ファイルに記録することができる。 (b) 本条に基づく提出は,それが対象とする出願を出願番号によって特定しなければならず,また,次のものを含まなければならない。 (1) §1.17(p)に記載されている手数料 (2) 特許商標庁による考慮を求めて提出される特許又は刊行物の一覧。これには,各特許又は刊行物の公開日・出版日が記載されなければならない。 (3) 一覧に記載された特許,若しくは書面形式による刊行物,又は少なくとも関連性を有する部分の各々の写し,及び (4) 依拠されている非英語特許又は書面形式による刊行物に係る必要かつ適切な部分の全てについての英語翻訳文 (c) 本条に基づく提出物は,§1.248に従って出願人に送達されなければならない。 (d) 本条に基づく提出物は,特許若しくは刊行物についての説明又はその他の情報を含んではならない。特許商標庁は,本条に基づく提出物にそのような説明又は情報が含まれている場合は,それらを記録しない。本条に基づく提出はまた,特許又は刊行物の総数として10件に限定される。 (e) 本条に基づく提出物は,それに係る出願の公開日(§1.215(a))から2月以内,又は許可通知の郵送前(§1.311)の内,何れか早い方までに提出されなければならない。本条に基づく提出物であって,前記期間内に提出されなかったものは,その特許又は刊行物をそれ以前に特許商標庁に提出することが不可能であった場合に限り許可され,かつ,その提出には,§1.17(i)に記載されている処理手数料の添付も行われなければならない。係属中の公開された出願についての公衆の一員による提出であって,本条の要件を満たしていないものは,記録されない。 (f) 公衆の一員は,その提出物が受領されたことについての特許商標庁の確認を受領するために,提出物に本人宛ての葉書を含めることができる。本条に基づく提出物を提出する公衆の一員は,本人宛て葉書の返送以外には,その提出に関し特許商標庁からの連絡を受けない。出願人は,特許商標庁からの要求がない場合は,本条に基づく提出について応答する義務及び必要を有さない。 |
規則1.290 出願における第三者による提出 (a)第三者は、米国特許法第122条(e)及び本セクションの規定に適合すれば、考慮のため及び特許出願記録への包含のため、出願の審査に関連する可能性のある特許、公開特許出願または他の刊行物を提出することができる。米国特許法第122条(e)及び本セクションの規定に適合しない場合、出願において第三者が上記特許等を提出してもUSPTOはそれらを包含または考慮しない。 (b)本セクションに基づく第3者の提出は、以下のいずれかの期日の早いほうに従ってなされなければならない- (1)出願において、規則1.311(許可通知)に基づく特許許可通知の日が付与または郵送された日、または (2)- (i)USPTOにより米国特許法第122条(出願の秘密性;特許出願の公開)及び規則1.211(出願公開)の規定に基づき、対象特許出願が最初に公表された日から6ヶ月後,もしくは (ii)対象特許の審査において、審査官による規則1.104(審査の内容)の規定に基づくクレームに対する最初の拒絶理由発行日、のいずれか遅い方 (c)本セクションに基づく第三者による提出は、書面で行われねばならず、当該提出書類の各頁において、本セクションパラグラフ(d)(3)により要求されるコピーを除いて、当該提出が行われた出願を出願番号により特定しなければならない。 (d)本セクションに基づく第三者による提出は以下を含めなければならない (1)提出される書類のリスト; (2)各リスト書類の関連性を示す簡潔な説明 (3)リストした書類、または、当該書類をリストするに至った部分の判読可能な写し。ただし、USPTOが要求しない限り、米国特許及び米国特許公開公報を除く。 (4)リストした書類のうち、審査官が考慮する非英語文書の関連部分すべての英語翻訳、及び (5)提出を行う当該第三者により以下の事項を示す声明 (i)第三者は規則1.56(特許性に関する重要情報の開示義務)に基づく出願に関する情報を開示する義務を負う個人ではないこと、及び (ii)当該提出が米国特許法第122条(e)の規定及び本セクションに従っていること。 (e)本セクションパラグラフ(d)(1)により要求される書類リストは、米国特許及び米国特許公開公報を、他の書類とは別のセクションにて、リストしなければならない。また、「規則1.290に基づく第三者発行前提出」のようにリストを特定する標題を含めねばならない。さらに、以下を特定しなければならない。 (1)特許番号、筆頭発明者及び登録日により米国特許を特定しなければならない。 (2) 特許公開番号、筆頭発明者及び公開日により米国特許公開公報を特定しなければならない。 (3)特許発行または出願公開した国または特許庁、筆頭発明者、適切な書類番号、及び、特許または公開公報に示された公開日により外国特許または外国特許公開公報を特定しなければならない。 (4)可能であれば、出版社、著者、タイトル、提出される頁、出版日、及び、出版場所により非特許文献を特定しなければならない。書類から明らかでない場合、第三者は先行技術と主張する非特許文献の日を立証する義務を負う。 (f)本セクションに基づき第三者が提出を行う際は、提出する書類10部毎またはその一部分毎に、規則1.17(p)に規定された手数料(180ドル)を支払わねばならない。 (g)本セクションパラグラフ(f)で要求されるその他の手数料は、提出をなす第三者による声明に伴う全書類が3またはそれより少ない場合には、要求されない。ただし、当該声明にサインする者が妥当な調査後に知る限り、当該提出が当該出願において当該第三者または該第三者の関係者により、米国特許法第122条(e)に基づき提出される最初かつ唯一の提出である場合に限る。 (h)USPTOによる要求がなければ、出願人は本セクションに基づく提出に対応する義務がなく、また必要がない。 (i)規則1.8(郵送又は送信の証明書)の規定は、本セクションにおいて規定される期限に適用されない。 |
1.291 係属中の出願に対する公衆による異議申立 *** (b) 異議申立書が,(c)を満たしていることに加え,§1.248に従って出願人に送達されているか,又はその送達が不可能なときはその2部が特許商標庁に提出されており,かつ,(b)(1)の場合を除き,異議申立書が,§1.211に基づいて出願が公開された日又は§1.311に基づく許可通知書が郵送された日の内,何れか早く生じる日の前に提出されている場合は,その異議申立書は,出願の記録に入れられる。 (1) 異議申立書に出願人の同意書が添付されている場合において,異議申立書が手続中の再審理を可能とする時期に出願と突き合わせられるときは,その異議申立書は,考慮されるものとする。
*** (c) 異議申立書は,(a)及び(b)の要件を満たすことに加え,次のものを含まなければならない。 (1) 依拠する特許,刊行物又は他の情報の一覧 (2) (c)(1)に従って列記される各項目の関連性についての簡単な説明 (3) 列記された各特許,刊行物若しくは書面による他の情報項目又は少なくともその該当部分の写し (4) 依拠する,非英語による特許,刊行物又は他の情報項目の中の必要であり,かつ,該当する部分の全てについての英語翻訳文,及び (5) 異議申立が同一利害関係人による第2回目又は後続の異議申立である場合は,第2回目又は後続の異議申立において提起されている争点が先に提起された争点と著しく異なっている理由及び著しく異なっているその争点が先に提出されなかった理由についての説明,並びに§1.17(i)に記載されている処理手数料が提出されなければならない。 |
規則1.291 係属中の出願に対する公衆による異議申立 *** (b)異議申立書が,(c)を満たしていることに加え,規則1.248 (書類の送達;送達方法)に従って出願人に送達されているか,又は,その送達が不可能なときは,特許商標庁に2 部提出されており,かつ,(b)(1)の場合を除き,異議申立書が,出願が米国特許法第122条(b)(出願公開)及び規則1.211(出願公開) に基づいて公開された日又は規則1.311(許可通知) に基づく許可通知書が付与若しくは郵送された日の内,何れか早く生じる日の前に提出されている場合は,その異議申立書は出願の記録に入れられるものとする。 (1) 異議申立書に出願人の同意書が添付されている場合において,異議申立書が規則1.311(許可通知)に基づき許可通知書が付与若しくは郵送される前に提出された場合、その異議申立書は,考慮されるものとする。 *** (c) 異議申立書は,(a)及び(b)の要件を満たすことに加え,次のものを含まなければならない。 (1) 依拠する特許,刊行物又は他の情報のリスト。以下により特定する。 (i) 特許番号、筆頭発明者及び登録日により各米国特許を特定 (ii) 特許公開番号、筆頭発明者及び公開日により各米国特許公開公報を特定 (iii) 特許発行または出願公開した国または特許庁、筆頭発明者、適切な書類番号、及び、特許または公開公報に示された公開日により各外国特許または各外国特許公開公報を特定 (iv) 可能であれば出版社、著者、タイトル、提出される頁、出版日、及び、出版場所により各刊行物を特定。 (vi)知っていれば、日により特定する他の情報に係る各項目 (2) (c)(1)に従ってリストされる各項目の関連性についての簡単な説明 (3)リストされた各特許,刊行物若しくは書面による他の情報項目または少なくともその該当部分の判読可能な写し。ただし、USPTOが要求しない限り、米国特許及び米国特許公開公報を除く。 |
規則1.292 (公然実施手続) |
削除 |
[1] 規則を除く米国改正特許法の詳細については拙著「決定版 改正米国特許法全理解」ILS出版 2012年1月を参照されたい。
(第2回へ続く)
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