(続き)・・次に挙げられる骨の機能は、筋肉の力を伝えるテコとしての役割です。我々が重力に負けることなく立っていられるのも、歩く、走る、投げる、などといった動作をスムーズに行なうことが出来るのも、筋肉が発した力を骨が滞りなく伝えているからです。例えばボールを投げるという動作は、大胸筋や三角筋など上肢の筋肉が発した力を、上腕骨や前腕の骨、指の骨などが協働して伝え、初めて成立します。
さらに骨には脳や内臓を保護する機能があります。もともと骨という臓器は、昆虫の殻のように体全体を外圧から保護する外骨格から発達したと言われていますが、生物の進化とともに外骨格は退化しました。しかしながら人間に於いても、脳を保護する頭蓋骨は外骨格の性質をしっかりと保っています。もし頭蓋骨がなければ、柔らかくて脆い脳は簡単に傷つき、我々は生きていくことができません。
意外に重要な骨の役割として、血液中の「カルシウム濃度」を一定に保つことが挙げられます。カルシウムの99%は骨に蓄えられていますが、カルシウムは細胞の活動にとって極めて重要なミネラルで、その血液中に於ける濃度が大きく変動すると様々な障害が現れます。従って各種ホルモンやビタミン類によって、その濃度が厳密にコントロールされています。
血中のカルシウムが不足した際には、副甲状腺ホルモンが「破骨細胞」を動員して骨を溶かし、カルシウムを放出します。その一方でビタミンDを活性化して、小腸からのカルシウムの吸収を促進します。このような作用によって血中カルシウムは上昇します。血中のカルシウムが過剰になった場合にはこれと逆の作用が働き、カルシウム濃度を低下させます。そのようにして血中カルシウム濃度が一定に保たれているのです。
そのように重要な役割を果たしている骨は常に部分的に壊され、新しく作り直されています。これを骨のリモデリングと呼びますが、骨はぜリモデリングを繰り返すのでしょうか。骨には大変な外圧がかかっているため、小さな傷がいくつも出来るため劣化してしまいます。この小さな傷を放置していると次第に傷が大きくなって、しまいにはポキリと折れてしまうでしょう。
そこで小さな傷が発生した場所に於いては、骨を壊す役割をもった破骨細胞がその周囲の骨を溶かして分解し、続いて骨を作る機能をもった骨芽細胞が新しい骨組織を作り、異常が発生した部分を埋め合わせます。このようなリモデリングは常に骨のどこかで行なわれており、そのおかげで我々の骨はその強度と機能を維持することが出来るのです。骨は約10年で完全に作り替えられるとされています・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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