現代の日本は世界有数の長寿国となっています。平均寿命は男性が80歳、女性が86歳で、男女ともに世界トップクラスの長寿を誇っています。その影響もあり、日本は人類がかつて経験したことのないような高齢化社会を迎えています。2015年には65歳以上の高齢者の人口が3000万人を超え、総人口に占める割合は25%にも達すると予測されています。
そのように国民が長生きをするようになるのは嬉しいことですが、手放しでは喜べないというのが現実です。というのは、高齢者が増えるのと同じくらいのスピードで「寝たきり」の高齢者も増えているからです。ある統計によると、日本人は男女ともに死亡する平均7年前から病床についているとされています。すなわち多くの高齢者は寝たきり、もしくはそれに近い状態で過ごしているというのです。
高齢者が寝たきりの状態になると、本人の苦痛や不自由さはもとより、家族や親類による介護の負担はたいへん大きく、大きな社会問題となっています。また医療費全体の増大や介護保険による出費の増加にもつながり、経済的な損失も大きくなっています。そのような寝たきりの高齢者の増加を食い止めようと、国や行政、企業や健保組合、医療機関などが知恵を絞っていますが、なかなか有効な手立てを打ち出せずにいます。
そのように深刻な問題となっている寝たきり高齢者ですが、その原因となる疾患としてはどのようなものが挙げられるのでしょうか。原因疾患として最も多いのは脳卒中で、約36%を占めています。その次に多いのは老衰で約13%です。それに続いて第3位に挙げられるのは転倒などに起因する骨折で、約11%を占めています。さらに膝などの変形性関節症が約10%とされています。
すなわち寝たきりになる原因の約20%は、骨折や関節の障害といった「運動器」のトラブルによって生じているのです。我々は脳卒中や心臓病などの生命に関わる病気にはたいへんな関心をもち、罹らないように細心の注意を払いますが、骨折や関節の障害などに対しては、どれだけの関心と注意を向けているでしょうか。これら運動器のトラブルは寝たきり状態を招くだけでなく、ひいては生命を脅かす存在ともなります。
すなわち骨折などのために長期間の安静臥床を余儀なくされると、怪我をした箇所に留まらず、全身の様々な機能が長期にわたり不活発な状態に置かれます。その影響で全身的に機能の低下した病的な状態、いわゆる「廃用症候群」に陥ります。骨折など運動器の障害だけでなく、脳卒中や老衰などから寝たきりに至る直接の原因は、実はこの廃用症候群であるとされています・・(続く)
このコラムの執筆専門家

- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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