- 松山 淳
- アースシップ・コンサルティング コンサルタント/エグゼクティブ・カウンセラー
- 東京都
- 経営コンサルタント
対象:キャリアプラン
- 宇江野 加子
- (キャリアカウンセラー)
- 冨永 のむ子
- (パーソナルコーチ)
人は弱いからちゃんとした人になれる【第2章-1】
いつから「すいません」が口癖になったのだろう。
電車の吊り革につかまりながら、美咲はつぶやいた。
曇りだった空は茜色に染まっているようだ。
夕焼け空は見えない。
気味悪いくらいに重なるビルの色を見てそうわかるのだ。
(夕焼け、東京に夕焼けなんてあったんだ)
田舎で一人暮らす年老いた母を思い出す。
元気にしているだろうか。一年も会っていない。
疲れがたまった首の凝りをほぐそうと上を向くと、
「結婚紹介所」の広告が目に入った。
「理想の相手がきっと見つかります」と、
大きな文字で書かれ、奇麗なモデルがウィデングドレスを着て、
ブーケを持って微笑んでいた。
あわてて車窓に視線を移した。
何かが、心の中で切れそうになっている。
クリスマス・イルミネーションのライティングカラーを、
今年はグリーンからブルー系統に変えて欲しいと、
依頼を受け、打合をし、確かに発注した。
オーナーから携帯に電話が入り、別の現場から飛んで行くと、
昨年と同じグリーンの光がお店を彩っていた。
「あんたんとこは、丸投げか」
美咲の顔を見た途端、投げられた言葉。
「すいません、すいません」
と、おびえた子どものように反射的に頭を下げた。
それからオーナーの怒りがおさまるまで一時間かかった。
正確には、上司の中村さんが来るまでだ。
*1
*1この物語はフィクションです。 登場する人物名・団体名等は実在のものと一切関係ありません。