
- 杉田 昌穂
- 青穂塾 塾長
- 大阪府
- 塾講師
対象:子供の教育・受験
では、なぜこのように無理な先取り学習が行われているのでしょうか?
能力の高い生徒をさらに高いレベルに引き上げるためではありません。あくまで入試に有利に持って行くためです。また宣伝効果をねらっているのです。
例えば「受験の神様、和田秀樹の受験の方程式」(http://www1.bbiq.jp/ggl48/wada.html) というホームページには、「合格できる受験勉強にとって最も重要なこと。それは、『合格に必要のない勉強は"一切"やってはいけない!』 ということです。」と書かれています。さらに「大学に合格したいのであれば、志望校に合格するために必要な勉強以外、一切、やってはいけないのです。 たとえ学校の授業だろうが、ゼミや塾の授業だろうが、志望校に合格するために必要のない授業であれば、教師の目を盗んででも『志望校に合格するための勉強』を行わなければなりません。逆に言うと、志望校に合格するための勉強"だけ"を行えば、少ない時間でも効率良く勉強することが出来るのです。」(http://juken-houteishiki.com/top/)
多くの進学塾や幼児教室では基本的に同じ発想でやっているのだと思います。この発想でいくと、確かに受験にとって合理的だと思います。無駄を省いていけば先取り学習も十分できますし、その先取り学習をアピールすれば宣伝効果抜群です。
でも、こうして合格した人に次の時代を任せたくないとも思います。
私はホームページからの引用だけでは失礼かと思い、和田秀樹氏の著書を拝読しました。あまりに著書の数が多すぎますので、地元の公立図書館で目についた4冊です。「公立小中高から東大に入る本」(2002年 幻冬舎)、「試験に受かる人落ちる人」(2003年 幻冬舎)、「能力を高める受験勉強の技術」(2005年 講談社現代新書)、「学力危機」(1999年 河出書房新社)
「学力危機」は、和田秀樹氏の考えに疑問を持つ市川伸一氏(東京大学教育学研究科教授)との対談集ですので、たいへん読み応えがありました。この中で、市川氏は「教育というのは『なりたい自己』、つまり、いったいどのような人間になりたいのかという子どものイメージを広げる働きかけをすることが、一つの目的である。そして一方では、実際になれそうな可能性としての『なれる自己』を広げるための知識や技能を身につける援助をするものであると、私は考えている。人間は『なりたい自己』と『なれる自己』の重なるところから、自分の進む道を選んでいく。学習とは、その可能な選択肢を広げるプロセスであり、教育とはその援助であると考えたい。 しかし、なりたい自己として『勉強ができる人になりたい』とか『有名大学の学生になりたい(出身者でありたい)』というのでは寂しい。」と述べておられますが、和田氏の反論はあまり的確ではないと感じました。
私の考えは基本的に市川氏と同じです。和田氏の考え方では、社会の多様性が無くなってしまいます。社会の中に様々な能力を持った人たちのネットワークが存在して、豊かな社会になるのだと思います。
今、日本の芸術大学は受験生の激減に困っているそうです。これでいいのでしょうか?
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