失敗の多くは、自信の裏側にある慢心が原因になっているような気がします。
19歳のとき、コナミスポーツ(当時はピープルスポーツ)エグザステニスクラブのコーチテストを受け、見習いコーチ、サブコーチ、ヘッドコーチとステップアップしていきました。徐々に責任が重くなるのですが、それなりに会員(生徒)さんからの信頼を得られるようになったようで、担当クラスが賑わってきました。
すると「自信」もついてきます。自分なりのテニス理論があって(今思えばとっても稚拙ですが。笑)、他のコーチに負けてなるものか、という競争心も出てきます。これは、テニスプレイヤーとしての技術とテニスコーチとしての指導力を高める上で、とても良いことなのですが… 反面、失敗もたくさんしました。
担当クラスの会員さんが忘年会を開催してくれたときのことです。
幹事をしていただいた会員さんは、当時50代後半。お仕事は冠婚葬祭関連で、結婚式場などでは司会もされていて、設えはもう完璧です。
僕は、忘年会の参加者の中で最年少だったにも関わらず、テニスコーチという立場からとても丁重な扱われ方をします。二十歳そこそこの年齢にも関わらず、ずっと年上の方に丁重に扱われると最初はなんだか気恥ずかしいのですが、お酒が入って酔いがまわってくるとだんだんとその場に慣れてきて、油断してしまうものです。
それは、2次会のカラオケの席だったでしょうか。隣に座った△△さん(当時25歳くらいの女性)が、ちっとも上のクラスに昇格できない…という不満を口にしました。
彼女は、仲良しの女性と一緒にテニスを習いに来ていて、二人は大学時代からの友達とのことでした。ただ、そのご友人は、ほぼ毎週レッスンに参加していたのですが、彼女の方は休みがちでした。
そこで、僕は言ってしまいます。「(友達の)○○さんが言うならまだしも、休んでばっかりの△△さんがそれを言うなんてありえない…」という趣旨のことを。
彼女はとても綺麗な方だったし、実はちょっぴり好感を持っていたので、もっと頻繁に来て欲しいな、という気持ちもありました。だから悪気はまったくなくて、声のトーンも明るく、冗談のつもりでした。
その直後、たまたまマイクが回ってきました。気分良く歌い終えると…テーブルの反対側に座っていた会員さんが、コーチ、コーチ!と言って、僕の隣を指差します。
その先を見て、ぎょっとしました。△△さんが、涙を流していました。
そして、泣きながら小さな声で言いました。「仕事が大変で…レッスンのある土曜日にも仕事がちょくちょく入って…でも、大好きなテニスを続けたい!って…それで、がんばってるのに…そんなこと言うなんて、コーチ、ひどい!」
いつも参加している人は熱心な人であり、休みがちな人はそうではない、という思い込みがありました。
休んでいるのは、さぼっている。という決め付けがありました。
今、振り返れば、自分が良いレッスンをしているのに休むなんて…という慢心があったのだと思います。
このことをきっかけに会員さんが休むとき、そこで何が起こっているのかを想像するようになりました。
また、会員さんの仕事のことや他の趣味のことについても関心を持ち、質問するようになりました。
その結果、コートでの話題は、テニスのことだけでなく、仕事、趣味、悩みなどなど広がっていきました。寡黙な印象の方も、質問すれば、ご自分のことを活き活きと語るようになりました。そして、以前より多くの会員さんとの心の距離が近づいたように思います。
彼女には、相手が今どんな状態なのかを想像し、確認し、配慮することを教えてもらったように思います。
つづく
経営者のテニスサークル『Ex-Tennis』
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