
- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
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対象:事業再生と承継・M&A
- 村田 英幸
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3 優先株式・劣後株式
(1)概要
会社は,剰余金の配当または残余財産の分配について異なる定めをした,内容の異なる株式を発行することができます(会社法108条1項1号2号)。
優先株式とは,この剰余金の配当や残余財産の分配について,他の株式に優先した請求権をもつ株式のことをいいます。これに対して,劣後株式とは,他の株式に劣後した請求権をもつ株式のことをいいます。
なお,剰余金の配当を受ける権利や残余財産の分配を受ける権利のない株式を作ることはできますが,両方とも与えないこととすることはできません(会社法105条2項)。営利性の否定は株式会社の本質に反するためです。
(2)事業承継との関係
4で説明する議決権制限種類株式を導入した場合,かかる株式を取得した者に不満が生じるおそれがあります。そこで,このような不満を解消するために,議決権を制限する代わりに優先株式で剰余金配当について優先権を与えることが考えられます。しかし,中小企業の場合には,実際には配当を行わない場合も少なくありませんから議決権制限種類株式取得者が必ずしも納得するとは限りません。
(3)導入方法
剰余金の配当または残余財産の分配について異なる定めをした,内容の異なる株式を発行する場合には,以下の事項を定款で定めることが必要です(会社法108条2項1号2号)。
(ⅰ)剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法,剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容 (ⅱ)残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法,当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容 |
(定款案) (発行可能種類株式総数及び発行する各種類株式の内容) 第○条 当会社の発行可能種類株式総数は,次のとおりとする。 ① A種類株式 ○○○株 ② B種類株式 ○○○株 2 当会社の発行する各種類の株式の内容については,次のとおりとする。 ① A種類株式 (ア) 株式の譲渡制限 当会社の発行するA種類株式を譲渡により取得するには,当会社の承認を要する。 ② B種類株式 (ア) 剰余金の配当 ⅰ)当会社は,剰余金の配当を行うときは,B種類株式を有する株主(以下「優先株主」という。)又はB種類株式の登録質権者(以下「優先登録質権者」という。)に対し,A種類株式を有する株主又はA種類株式の登録質権者に先立ち,B種類株式1株につき年○○円の剰余金(以下「優先剰余金」という。)を配当する。 ⅱ)ある事業年度において優先株主又は優先登録質権者に対して支払う配当金の額が,優先配当金の額に達しないときは,その不足額は,翌事業年度以降に累積しない。(非累積型の場合) ⅲ)優先株主又は優先登録質権者に対しては,優先配当金を超えて配当を行わない。 (イ)株式の譲渡制限 当会社の発行するB種類株式を譲渡により取得するには,当会社の承認を要する。 |
(定款案) (発行可能種類株式総数及び発行する各種類株式の内容) 第○条 当会社の発行可能種類株式総数は,次のとおりとする。 ① A種類株式 ○○○株 ② B種類株式 ○○○株 2 当会社の発行する各種類の株式の内容については,次のとおりとする。 ① A種類株式 (ア) 株式の譲渡制限 当会社の発行するA種類株式を譲渡により取得するには,当会社の承認を要する。 ② B種類株式 (ア) 残余財産の分配 当会社は,残余財産の分配を行うときは,B種類株式を有する株主又はB種類株式の登録質権者に対し,A種類株式を有する株主又はA種類株式の登録質権者に先立ち,B種類株式1株につき金○○円を支払う。 (イ) 株式の譲渡制限 当会社の発行するB種類株式を譲渡により取得するには,当会社の承認を要する。 |
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