- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
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対象:事業再生と承継・M&A
- 村田 英幸
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第5 役員の損害賠償責任免除
1 総株主の同意による全部免除
役員等の任務懈怠責任は,原則として総株主の同意がなければ,免除することができません(会社法424条)。例外として,次に述べる,役員等の責任の一部免除があります。ただし,取締役が自己のためにした取引に関する責任については,原則通り,総株主の同意がない限り,免除することができません(会社法428条2項)。
違法な剰余金の配当金に係る責任は,分配可能額を限度として,総株主の同意により免除可能です(会社法462条3項)。
また,分配可能額を超えた違法な自己株式の取得に係る責任,剰余金の分配等によって生じた欠損を支払う責任,株主の権利行使に関する利益供与に係る責任も総株主の同意によって免除可能です(会社法464条2項,会社法465条2項,会社法120条5項)。
2 役員等の責任の一部免除
役員等の任務懈怠責任については,①株主総会の特別決議,②取締役の過半数の同意(取締役会決議),③責任限定契約によって一部免除が認められます。
(1)株主総会の特別決議
役員等の任務懈怠責任は,当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは,賠償の責任を負う額から次に掲げる額の合計額(最低責任限度額)を控除して得た額を限度として,株主総会の決議によって免除することができます(会社法425条1項)。
① 当該役員等がその在職中に株式会社から職務執行の対価として受け,又は受けるべき財産上の利益の一年間当たりの額に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額に,次に掲げる役員等の区分に応じ,次に定める数を乗じて得た額
代表取締役又は代表執行役 |
6 |
代表取締役以外の取締役又は代表執行役以外の執行役 |
4 |
社外取締役,会計参与,監査役又は会計監査人 |
2 |
② 当該役員等が当該株式会社の新株予約権を引き受けた場合(会社法238条3項各号に掲げる場合に限る。)における当該新株予約権に関する財産上の利益に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額
そして,取締役は,株主総会において次に掲げる事項を開示しなければなりません(会社法425条2項)。
① 責任の原因となった事実及び賠償の責任を負う額
② 免除することができる額の限度及びその算定の根拠
③ 責任を免除すべき理由及び免除額
また,監査役設置会社又は委員会設置会社においては,取締役は,取締役(監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任の免除に関する議案を株主総会に提出するには,次の株式会社の区分に応じ,次に定める者の同意を得なければなりません(会社法425条3項)。
監査役設置会社 |
各監査役 |
委員会設置会社 |
各監査委員 |
責任の一部免除の株主総会決議があった場合において,株式会社が当該決議後に役員等に対し退職慰労金その他の法務省令(会社法施行規則115条)で定める財産上の利益を与えるときは,株主総会の承認を受けなければなりません。当該役員等が会社法425条1項2号の新株予約権を当該決議後に行使し,又は譲渡するときも同様とされます(会社法425条4項)。
責任の一部免除の株主総会決議があった場合において,当該役員等が会社法425条4項の新株予約権を表示する新株予約権証券を所持するときは,当該役員等は,遅滞なく,当該新株予約権証券を株式会社に対し預託しなければなりません。この場合において,当該役員等は,同項の譲渡について同項の承認を受けた後でなければ,当該新株予約権証券の返還を求めることができません(会社法425条5項)。
(2)取締役の過半数の同意(取締役会決議)
監査役設置会社(取締役が二人以上ある場合に限る。)又は委員会設置会社においては,役員等の任務懈怠責任は,当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは,責任の原因となった事実の内容,当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは,会社法425条1項の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議)によって免除することができる旨を定款で定めることができます(会社法426条1項)。
会社法425条3項の規定は,(ア)定款を変更して,取締役(監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任を免除することができる旨の会社法426条1項の規定による定款の定めを設ける議案を株主総会に提出する場合,(イ)その定款の定めに基づく責任の免除についての取締役の同意を得る場合及び(ウ)当該責任の免除に関する議案を取締役会に提出する場合について準用されます(会社法426条2項)。
会社法426条1項の規定による定款の定めに基づいて役員等の責任を免除する旨の同意(取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議)を行ったときは,取締役は,遅滞なく,会社法425条第2項各号に掲げる事項及び責任を免除することに異議がある場合には一定の期間内(1か月を下回ることができない)に当該異議を述べるべき旨を公告し,又は株主に通知しなければなりません(会社法426条3項)。
非公開会社においては,公告では足りず,株主に通知しなければなりません(会社法426条4項)。 そして,上記期間内に総株主(責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)以上の議決権を有する株主が異議を述べたときは,株式会社は,定款の定めに基づく免除をすることができなくなります(会社法426条5項)。
会社法425条4項及び5項の規定が準用されます(会社法426条6項)。
(3)責任限定契約
株式会社は,社外取締役,会計参与,社外監査役又は会計監査人(以下,「社外取締役等」という。)の任務懈怠責任について,当該社外取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは,定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額(会社法425条1項に掲げられた額の合計額)とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を社外取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができます(会社法427条1項)。
ただし,その契約を締結した社外取締役等が当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人に就任したときは,当該契約は,将来に向かってその効力を失います(会社法427条2項)。
会社法425条3項の規定は,定款を変更して,社外取締役(監査委員であるものを除く。)と契約を締結することができる旨の会社法427条1項の定款の定めを設ける議案を株主総会に提出する場合について準用されます(会社法427条3項)。
会社法427条第1項の契約を締結した株式会社が,当該契約の相手方である社外取締役等が任務を怠ったことにより損害を受けたことを知ったときは,その後最初に招集される株主総会において次に掲げる事項を開示しなければなりません(会社法427条4項)。
① 責任の原因となった事実及び賠償の責任を負う額
② 免除することができる額の限度及びその算定の根拠
③ 当該契約の内容及び当該契約を締結した理由
④ 当該社外取締役等が賠償する責任を負わないとされた額
この場合,会社法425条4項及び5項の規定が準用されます(会社法427条5項)。
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