- 松山 淳
- アースシップ・コンサルティング コンサルタント/エグゼクティブ・カウンセラー
- 東京都
- 経営コンサルタント
対象:キャリアプラン
- 宇江野 加子
- (キャリアカウンセラー)
- 冨永 のむ子
- (パーソナルコーチ)
批判や悪口に負けるな!【第1章-3】
そう言うと、鈴木課長はスーツの裏ポケットから革張りの名刺入れを出し、その中からボロボロの1枚の名刺を出した。うつむき、こう言った。
「君に害を与える人間がいだいている意見や、
その人間が君にいだかせたいと思っている意見をいだくな。
あるがままの姿でものごとを見よ」*1
沈黙。鈴木課長は泣いているのだろうか。谷口は何か言わなければと言葉を探したが、場の空気に支配され沈黙に従った。
名刺をしまった鈴木課長は席を立ち、伝票を手にしてレジに向かった。あわてて後を追う谷口。
「俺、払います」
「ばかやろー、恥かかすな。先に外に出て、待ってるのがマナーだろ。忘れたのか」
外に出ると、雲の多かった空に薄日が差している。隣のインテリア雑貨のショップでは、クリスマス・イルミネーションの飾り付けを間違った装飾会社のスタッフが店主に頭を下げていた。何度も・・何度も・・・。
「人間ってかわれるんですかね」
鈴木課長の少し後ろを歩きながら、谷口は尋ねる。
「さあ、どうなんだろうな〜。わかんねーよ!」
谷口はポケットに入っている煙草を握り・・・、手を離した。
*1「君に害を与える人間がいだいている意見や、その人間が君にいだかせたいと思っている意見をいだくな。あるがままの姿でものごとを見よ」『自省録』(マルクス・アウレーリウス 岩波文庫)