私的整理 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士

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対象:事業再生と承継・M&A

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1 概説

 私的整理は、裁判所に法的整理手続開始の申立てをしないで、債務過多の債務者が債権者より債務免除を得て再建または清算をする債務整理手法です。

 すなわち、私的整理の特徴は、(ⅰ)裁判所の関与なしに、(ⅱ)債権者との合意により、会社の再建ないし清算を進めていくという点にあります。

 

2 私的整理のメリット

(1) 費用

 私的整理は、裁判所の関与なくして行う手続でありますから、法的整理の場合に裁判所に対して支払う予納金が不要になります。したがって、費用面において、法的整理よりも優れているといえます。

(2) 柔軟な解決

 私的整理は、債権者との合意により、その手続、内容を決定していくものですから、債権者の合意が得られれば、再建の手続、内容を自由に決定することができます。したがって、法的整理の場合よりも柔軟な解決を図ることが可能であり、経営者の意向に沿った再建計画を実現しやすいというメリットが存在します。

(3) 迅速な処理

 債権者の数が少ない場合や債権者の協力が得られることが明らかな場合には、簡易迅速に手続を進めることができ、時間的コストの面においても法的整理よりも優れているといえます。

 なお、後述する、私的整理ガイドライン手続では、手続開始から第1回債権者会議を2週間以内、第1回債権者会議から第2回債権者会議を原則3か月以内でスケジュール想定しています。

(4) 信用力の低下の防止

 法的整理の申立てを行えば、その事実が周りに知れることにより、会社の信用力が低下することが起こりえますが、私的整理を行えば、そのような危険性は必要最小限に食い止めることができます。

 事業承継後の後継者の経営に対する信用力の低下を防ぐことができるという点で、この点は大きなメリットといえると思います。

 

3 私的整理のデメリット

(1) 手続の信頼性が低い

 私的整理は、裁判所の関与なくして手続が進められるため、その手続の中で、一部の債権者に対する抜け駆け的整理が行われたり、財産隠しが行われることもあり、その手続に対する債権者の信頼が得られにくいという問題があります。

そして、かかる抜け駆け的整理や財産隠しが行われた場合には、破産のように否認権の制度(破産法160条以下)がありません。そこで、債権者代位権や詐害行為取消権(民法423条、424条)等の民法上の手段によって事態に対処しなければならず、十分な効果は期待できないというデメリットがあります。具体的には、一部の債権者に対する抜け駆け的整理が行われた場合には、債務者に代位して不当利得返還請求権や損害賠償請求権を他の債権者が行使することが考えられます。また、他の債権者を害するような弁済がなされた場合には、他の債権者は抜け駆け的な回収をした債権者に対して詐害行為取消権を行使することが考えられます。

(2) 債権者の同意が必要

 私的整理は、各債権者との合意により、手続を進めていくことになりますから、債権者が多数存在する場合や、債権者の一部に私的整理に非協力的な者がいる場合には、かえって私的整理が長期化することもあります。

 さらに、最終的に債権者の同意が得られなければ、結局は法的整理に移行せざるを得ず、それまでの手続的、時間的コストが無駄になってしまうというデメリットもあります。

 

4 保証人

 会社について任意整理する場合、金融機関等に個人保証をしている保証人についても任意整理するのが通常です。

 

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