「はじめて経営者」講座 番外編 オリンパス事件から見えること - 会社設立全般 - 専門家プロファイル

岡田 誠彦
東京都
税理士

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対象:会社設立

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「はじめて経営者」講座 番外編 オリンパス事件から見えること

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ADめぐみ「前回、『取締役は1人でも会社は設立できる』と紹介しました。今日はその番外編です。その取締役に関わる大きなニュースが流れました。」

 

D税理士「いわゆる『オリンパス事件』で、オリンパス社が、損失隠しを主導していた菊川氏ら旧経営陣にくわえ、高山社長ら現取締役を含めた新旧経営陣計19人に対し、合計30億円以上の損害賠償を求めて提訴したというニュースだね。」

 

AD「私が注目したのは「不正に関わっていない・不正を知らなかった」とされる取締役も報告書において「責任がある」とされている点です」

 

「『経営判断が明らかに不合理だった』、というのがその理由だね。損失隠しを主導的に行った旧経営陣は当然としても、新経営陣も含めて責任を追及されたということは、取締役にはそれだけ大きな責任があるということを示していることになる。」

 

AD「現経営陣で責任を追及されなかった人もいます。」

 

「たとえば、損失隠しの舞台となった買収決議時点で海外赴任をしていたなど、そのこと自体に「明らかに関わっていない」等が判明している取締役となるよ。」

 

AD不正を主導した、あるいは、不正を知りながら黙認した、というのは理由として良く分かります。しかし、「経営判断が明らかに不合理だった」という理由で責任追及された取締役がいるというわけですね。」

 

「誤解がないように、報告書の文面をそのまま引用しよう。」

 

【報告書より引用】2010年3月19日取締役会決議について

当該取締役会決議に賛成した関与者・認識者以外の取締役については、損失分離の一部解消目的を認識していたとは認められない。

しかしながら(途中略)裁量のある経営判断として少なくとも当該優先株を買い取る必要性や買取価格の妥当性について適切な検討がなされる必要があった。

(中略)その分析、検討が十分にされないままオリンパスへの財務状態への影響も重大な620百万ドルの対価での優先株買取の提案を承認したものである。したがって経営判断をする前提となった事実の認識の過程(情報収集とその分析・検討)に不注意な誤りがあるとともに、経営判断の推論過程及び内容が明らかに不合理なものであったと認められる。従って当該取締役会決議に賛成した関与者・認識者以外の取締役(個人名の列挙あり)についても善管注意義務違反が認められる。

 

AD「なんだか少し厳しい気がします。つまりは、取締役会で賛成にまわった人に対し「経営判断に明らかに誤りがあった」という部分で責任追及されているわけですね。善管注意義務違反とはどういう意味ですか?」

 

「すごく簡単に言うと、善管注意義務違反というのは、「あなたは取締役という重要な立場なんだから、一般に要求される注意を払って業務を遂行する義務があったのに、それをしていませんでしたね」と言われている状況だよ。」

 

AD「「あまりに高額であったのにそこを考えずに賛成したのは経営判断の誤り」というわけですね。」

 

「ただ、世の中には、たとえリスクがあっても会社として決断しなければいけないことがたくさんあるからね。今回問題にされた原因は、賛成した取締役の人たちが『明らかに不合理・無謀な判断をしてしまった』と報告書上で結論づけられたからなんだ。」

 

AD「取締役として、もっときちんとした情報収集と分析・検討をすべきだったということですね。」

 

「実際は日本のサラリーマン的な組織だと難しいとは思うけどね。たとえば自分が会社で偉くなり、取締役になったばかりの状況を考えてみよう。自分よりも大先輩で頭があがらない人たちがその場にはたくさんいる。でも、もし疑問を感じたら、取締役会の流れをあえてとめ、問題を提起し、熟慮を求めて時には反対していくことが必要だ、ということなんだ。言うのは簡単だがきっと日本人にはなかなか難しいことだよね。しかし、取締役というのは、その重い役割が求められていることだよ。各取締役が責任をもって、一つ一つの重要案件を判断していく必要があるということだ。文章にすると当たり前ではあるけれど、実行は難しい。でも、それを丁寧に積み重ねないと、今回の事件のように、結果的に不正に加担してしまうことにもなりかねないわけだからね。」

 

AD取締役という責任の重さを感じ取ることのできる事件だ、という言い方もできますね。引き続き折を見て、この件は追っていきましょう。」

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