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米国改正特許法逐条解説 (第5回)
~第2回 冒認出願とレビュー手続~
河野特許事務所 2012年 1月18日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(7)PTABにおけるレビュー
PTABがレビューを行う(326条(c))。レビューにおいては、ディスカバリが行われる。ただし、ディスカバリは、手続における当事者いずれかにより提出された事実主張に直接関連する証拠に限定される(326条(a)(5))。
PGRにおいて申立人は、「証拠の優越preponderance of the evidence」に基づき非特許性の主張を証明する義務を負う(326条(e))。なお、裁判所では「明確かつ説得力ある証拠clear and convincing evidence」に基づき非特許性の主張を証明する義務を負うが[1]、これよりは低い基準である。
(8)特許権者の対抗手段
(i)反論書類の提出
PGRが申し立てられた場合、特許権者はPGRを開始すべきでないという反論理由を記載した予備反論を提出する権利を有する(323条)。長官は申し立て理由及び予備反論に基づきPGRを開始するか否かを決定する。
(ii)補正
PGRの間、特許権者は原則として1回補正することができる。具体的には以下の補正が可能である。
(A)申し立てられた特許クレームをキャンセルする
(B)各申し立てられたクレームについて、合理的な数の代替クレームを提案する
ただし、補正は、クレームの範囲を拡大してはならず、新規事項を追加してはならない。(326条(d)(3))
(9)調停
PGRは申立人と特許権者との共同要求により、終了する。調停の場合、米国特許法第325条(e)に基づく禁反言は、生じない(327条)。
(10)PGRの決定
PTABが書面によりクレームの特許性に関し決定をおこなう(328条(a))。
(11)PGRと中用権
最終決定に基づく証明書発行前に、提案補正クレームまたは新規クレームにより特許された物を米国内で使用、製造もしくは購入し、または米国内に輸入する者、或いは、実質的にその準備をしている者には、中用権が発生する(328(c))。すなわち米国特許法第252条(再発行の効力)で認められているのと同様に、衡平法(Equity)の観点から認められるものである。
(12)不服申し立て
PTABの決定に対してはCAFCに控訴することができる(329条)。
(13)施行時期
1年後の2012年9月16日である。なお、先願主義制度の下での特許のみが対象となる(AIAセクション6(f)(2)(A))。
[1] Microsoft Corp. v. i4i Limited Partnership No. 10-290 (U.S.C 2011)
(第6回へ続く)
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