わたくしの大好きな落語家の古今亭志ん生師匠なんぞ、その上を行きまして。「金なんか貯めようたって貯まるもんじゃアありませんナ。巡り合わせですナ。」なんて涼しい顔で語っているのですから、大したもんです。
昔の日本家屋は木と紙でできていましたから、一旦火事が起きると、アッという間に江戸中に広がって、すべてを灰にしたといいます。そんな大火事が周期的に起こるものですから、江戸っ子たちに蓄財意識などハナから芽生えるはずもなく、いきおい「宵越しの銭は持たない!」となったのでしょう。
わたくしも代々続く江戸っ子の生き残りでして、小さい時から「サブクッたって(寒いからといって)ゴテゴテ襟巻きなんかするモンじゃねェ」とか、役に立たないことばかり教育されてまいりましたが、その江戸っ子の末裔が「貯金の代わりに家賃収入を得ましょう!」とか、皆さんに言ってるわけですから、ホントご先祖様に申し訳なくって。おじいちゃんのお墓をお参りするたんびに、「ゴメンネ、アタシ、生まれぞこないになっちゃったヨ・・」と、ワンカップのお酒をお墓にかけてあやまっている次第です。