- 杉浦 繁
- Atelier繁建築設計事務所 代表
- 愛知県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
敷地の境界線ってのをご存じでしょうか?
敷地には境界があります。
敷地と隣地の境です。
当たり前ですが・・
建物を建てる自分の敷地と隣の敷地の境界の位置を示すラインのことを「隣地境界線」と言います。
自分の敷地と道路との境界の位置を示すラインのことを「道路境界線」と言います。
自分の敷地と川などの水路との境界の位置を示すラインのことを「水路境界線」と言います。
そう・・
そこには実際には「線」はありません。
あるのは、見えないラインです。
ですから敷地の境界線ってのはあくまでも架空の線のことで・・
そこに本当にあるのは・・
敷地の境界ラインの交点に埋められているコンクリートや鉄の鋲などで作られた杭。
「境界杭」だけです。
「境界杭」と「境界杭」を結んだ架空の線、それが隣地境界線であり道路境界線です。
この境界線や境界杭というのは、我々が作る物でも、埋める物でもありません。
これを埋めることが出来るのは、土地家屋調査士さんで・・
境界に関わる廻りの全敷地の持ち主の立ち会いの元で杭の位置を決めて、その杭の廻りの敷地持ち主全員が立ち会い書に記名押印の上で、そこに杭は埋められます。
その上でその杭の位置を測量士さんが測量し、それが登記され敷地の形は確定します。
一度確定してしまえば、その敷地がある限り永遠に変わることはありません。
誰がどんな文句を言おうと、たとえ杭を引っこ抜いてしまっても、元の測量図が登記されていれば元の位置に杭は戻されるだけのことになります。
基本的には、建築をする際には敷地を確定しておくことが必要です。
つまり境界線を境界杭を入れて確定しておく。
つまり測量しなければなりません。
ま、当たり前なことのですが・・
敷地が決まってなければ、敷地の中のどこに建てるもくそもないのです。
ところが、実は・・
本当はこの敷地の確定はしていなくても建築することは可能なんです。
ただ・・
設計者は確認申請の際に必ず敷地求積測量図を設計者名で添付し、それを元に設計はしなければなりません。
これは土地家屋調査士さんや測量士さんが測量した物でなくても構わない、自分である程度は測ってくればよい・・
のですが・・
もし、その境界線の位置が間違っていたりして、あるいは後から隣に文句を言われて境界線が変わったりして建物が基準法の形態制限などにひっかかると違法ということになってしまいます。
下手したら、設計者の免許がなくなるのです。
だって・・
そんなんがいいってことになったら、敷地を勝手に大きいってことにしておいて、建物を大きく作ったり境界線からの空きを狭くしたり好きなように出来てしまいますから。
ですから、境界の確定していない敷地の場合はよっぽどのことがない限り相当な余裕を持って計画をしなければなりません。
建てる前に確定しておけば、今も将来も隣地の人ともめる心配もありません。
注意しなければいけないのは・・
敷地に境界杭が入っているから安心!なんてことにはなりません。
境界杭があるからといって、その位置がきちんと測量して登記されているとは限らないのです。
出来うることならば・・
建築前には敷地が確定しているかどうかをきちんと確認して・・
確定していない敷地に建築する場合は・・
建築前には測量登記を済ませておくのがベストです!
建築費用に比すればほんの少しの投資で安心を!
もちろん、土地を購入する場合は必ず測量図と登記の確認を!
そうやって確定させた敷地の境界線!
この敷地境界線は建築において基本中の基本です。
建物を計画する時、設計する時、建築する時、全てはこの敷地の境界線と境界杭から始まります。
建物は必ずどこかの敷地の境界線を基準にして設計され建てられるのです。
まず、どこかの敷地境界線の一本を基準線に決めて、この敷地境界線の一方の端部の境界杭を基準点にその反対側の境界杭を準基準点と決めます。
この基準線・基準点・準基準点はどこの敷地境界線でも構いません。
お好きなところに・・
というか、当然やりやすい境界線を選びます。
この基準杭のことを配置原点・・
準基準杭のことをPOINTと言います。
建物は、その配置原点からX方向に何mm、Y方向に何mmの位置を・・
建物のどこそこの角にと定めて位置を決めて・・
その基準線の敷地境界線に対して建物を平行にとか何度の角度でと決めて設計し建てられます。
つまり、まず配置原点を定めることから設計は始まり・・
配置原点からすみ出しすることで建築工事は始まる・・
そう・・
全ては配置原点から始まり・・
数字で決められます。
数字で決められた位置であるから・・
たとえば日影規制の影がどこまでどこに落ちるのか計算することが出来る。
道路から何m何cm離れているから車が何台はいると計算することが出来る。
決して・・
この辺に建てようとか・・
こっち向きに建てようとか・・
適当に建てることはありませんし・・
それは許されないのです。
【 このコラムはブログ記事をまとめた物です。詳しくはブログ「よもやま建築日記~家づくりの現場から~」をどうぞ。 】
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