米国特許判例紹介:Bilski最高裁判決後の保護適格性判断(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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米国特許判例紹介:Bilski最高裁判決後の保護適格性判断(第1回)

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米国特許判例紹介: Bilski最高裁判決後の保護適格性判断(第1回)

~記録媒体クレームに対する判断~

                Cybersource Corp.,

                           Plaintiff Appellant,

                     v.

                Retail Decisions, Inc.,

                             Defendant- Appellee.

河野特許事務所 2011年12月19日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

1.概要

 米国特許法第101条は、米国において特許を受けることができる発明として以下のとおり規定している。

 

第101 条 特許を受けることができる発明

新規かつ有用な方法,機械,製造物若しくは組成物,又はそれについての新規かつ有用な改良を発明又は発見した者は,本法の定める条件及び要件に従って,それについての特許を取得することができる。

 

 このように、米国では「新規かつ有用な方法」等であれば新規性及び非自明性等の他の特許要件を満たすことを条件に幅広く特許を認めている。ただし、最高裁は方法が、自然法則、物理的現象または抽象的なアイデアにすぎない場合は、保護適格性を有さないとして特許の付与を認めていない[1]。

 

 本事件においては、電子商取引における詐欺検出方法及び装置に関する特許発明が米国特許法第101条の要件を満たすか否かが問題となった。CAFCはBilski最高裁事件[2]の判示事項に従い、方法クレーム及び記録媒体クレーム共に、米国特許法第101条の要件を満たさないと判断した。本稿では約1年前に下されたBilski判決後のCAFCの保護適格性の判断について分析する。

2.背景

(1)特許発明の内容

 CyberSource社(以下、原告という)はU.S. Patent No. 6,029,154(以下、154特許という)の所有者である。154特許は「顧客と業者との間のインターネットを介したクレジットカード取引における詐欺検出方法及びシステム」に関する。参考図1は154特許の代表図である。

 

参考図1 154特許の代表図

 

 参考図1におけるIVS(Integrated Verification System)106における詐欺検出器(Fraud Detector)210が、インターネット取引が有効か否かを判断する。154特許はクレジットカードを用いた取引において、詐欺を検出する際にIPアドレスを用いるものである。具体的には、ユーザが既に詐欺取引に使用されていたIPアドレスを通じて大量購入した場合、詐欺と判断するアイデアである。

 

 154特許の実施例には以下の技術が開示されている。詐欺検出器210は履歴チェック(History Check)202、整合性チェック(Consistency Check)204、AVS(Automatic Verification System)206、IIVS(Internet identification Verification System)208からパラメータを受け取り、詐欺を検出する。整合性チェック204はクレジット情報がユーザ及び他の情報に一致するか否かを判断する。AVS206は公知のクレジットカード情報の照合システムであり、郵便番号及びクレジットカード番号等を用いて認証を行うシステムである。履歴チェック202は対象となる取引が履歴DB222に記憶された情報に合致するか否かを判断する。

 

 IIDVS208は、他の業者により情報が追加されるDB224を参照し、インターネットアドレスの有効性を判断する。具体的には、IIDVS208は、DB224から特定のインターネットアドレスを用いて処理された一群の取引データを取得する。次いで、IIDVS208は、取得した取引データのマップを構築する。最後に、IIDVS208は、構築したマップを用いて、新規クレジットカード取引が有効であるか否かを判定する。

 

 W1~W4は各パラメータへの重み付けを行う。詐欺検出器210は取引履歴DB222及び他の業者により追加されたDB224を参照し、上述した様々なパラメータに基づきクレジットカード情報に対する認証を行う。



[1] Diamond v. Chakrabarty, 447 U. S. 303, 308 (1980)

[2] Bilski v. Kappos, 129 S. Ct. 2735 (June 1, 2009)

 

(第2回へ続く)

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