最近の健康ブームも反映してか、街の薬局やドラッグストアの商品棚には夥しい数の健康食品やサプリメントの類が並んでいます。駅前や商店街など人の集まる場所にはたいてい大きな薬局がいくつもあり、しかも多くの店は繁盛しています。薬局だけでなく、スーパーやコンビニなど他業種の店舗もサプリメント類を商品として扱うようになり、物によってはまさに飛ぶように売れています。そのように今や誰もが簡単にサプリメントを購入し、利用できる時代になったのです。
商品の品揃えも実に多様になっています。ビタミン剤、ミネラル剤はもとより、プロポリス、ロイヤルゼリー、アロエ、乳酸菌、イチョウ葉、黒酢、コエンザイムQ10などと、それこそ枚挙に暇がありません。これらの商品が無数の企業によって製造、販売され、またその競争がたいへん激しくなっています。購入する消費者は増えていますが、それ以上に商品数や企業数がとても多く、いくぶん過当競争の様相を呈しています。うかうかするとライバル企業にやられてしまい、市場からの撤退を余儀なくされる程です。
消費者の間でもサプリメントへの関心は高まっています。もともと健康に関心の高い層はもとより、糖尿病や高血圧、ガンなどの生活習慣病に罹っている患者やその予備軍、とりたてて病気はないものの漠然とした体調不良や体の衰えを感じる人、そしてより若く美しくなりたい女性などが、雑誌やテレビなどの健康情報を頼りにしてサプリメントを購入しています。病院の医師や薬剤師など医療専門職に対しても、有効なサプリメントは何か、などと質問をぶつける患者が少なくありません。
このようなサプリメントを重宝する傾向は日本ばかりではありません。医療先進国とされている米国ではさらに顕著で、医師が患者に対して積極的にサプリメントを勧め、また処方しています。例えば風邪をひいて病院を受診した場合、日本の医師は風邪薬や解熱剤などを処方しますが、多くの米国の医師は風邪薬の代わりにビタミン剤を処方することが一般的です。日本に比べて米国では、病院や医師、薬剤師などがサプリメントの使用にも積極的である点が異なります。
このようなサプリメントの普及によって、病気の治療や健康増進のための選択肢が増えたことは確かです。上記の風邪の例をみても、風邪薬を飲む以外にビタミン剤を飲むという選択肢が加わることになります。また疲れが溜まっている場合や、宴会が続いて胃腸の調子が良くないといった場合に、もし有効なサプリメントに出会えれば、手軽に症状を軽減させることができるかも知れません。特に大半のサプリメントには薬のような副作用がないため、安全に健康を手に入れられると考えがちです。
ただサプリメントが手軽で安全だということで、手放しでは喜べないのも事実です。薬品と違い厳密な臨床試験を経ていないため、有効性や安全性を充分に検証していない商品が多く出回っており、中には品質や価格の点で良質とはいえない物も少なくありません。一方では有効性や安全性が証明されている良質な商品も存在しますが、それを入手するのは往々にして困難です。またサプリメントに頼って食事などライフスタイルを蔑ろにするのも、本末顚倒というものです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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