手ブレ補正機能を過信しないようにしたい - 写真撮影レッスン - 専門家プロファイル

宮本 陽
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兵庫県
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閲覧数順 2024年04月22日更新

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手ブレ補正機能を過信しないようにしたい

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そうだったの?意外なカメラの知識

そうだったの?意外なカメラの知識:手ブレ補正機能を過信しないようにしたい

【そもそも手ブレとは何?】

現在販売されている一眼レフカメラには、ほぼ全て「手ブレ補正機能」が搭載されるようになりました。手持ちで撮影する限りブレは避けられないため大変重要な機能の一つです。

大変重要な役目を果たしてくれる手ブレ補正機能ですが、そもそも手ブレとは何でしょうか?

これは撮影者が手で持って撮影している限り、完全に動かず静止した状態でシャッターを切ることはまず不可能です。結果としてカメラが微妙に動いてしまうために、撮影した写真が流れて写ってしまう現象です。よく「このカメラ、いつもボケてるんですよ」と仰る方がありますが、撮影された写真をよく見ると全てが同じように流れてしまっていることが多く、これはブレですよね...。というお話しになります。

手ブレ補正機能は、この人間が意図せず微妙に動いてしまう動作を打ち消すものです。詳細はメーカーサイトに任せるとして、概要は人間の動きをセンサーが感知し、その動きを打ち消すような反対の動作を行う、というのが原理です。大変に高度な技術であることがわかります。

 

【手ブレ補正は2通りのモデルがある】

この手ブレ補正機能は、レンズ側に備わっているかボディ側に備わっているかによって、それぞれ長所短所があります。

まずレンズ側にその機能がある場合には、そのレンズが装着できるボディであれば常に機能が有効にできるという点がメリットです。ボディがモデルチェンジしても、そのレンズの機能が発揮できる限り、手ブレ補正機能も働きます。また、ファインダーを通して構図を決める段階でも補正が効くため、安定した画面を見ながら撮影ができる点も大変有難いものです。(代表的なメーカーはCanon、Nikonでレンズ内補正が採用されています)

他方、ボディ側にその機能がある場合には、同じマウントで装着できるレンズであれば全てに機能が働くという点がメリットになります。古いレンズであっても装着できる限り機能は働きます。ですが、光学ファインダーの場合には、覗いている段階では手ブレ補正は効きません。(代表的なメーカーはSONYでボディ側補正が採用されています)

現在の多くのモデルでは、レンズとボディとの間で電気的な通信を通して制御を行っているため、マウントアダプター等により異なる規格のレンズを装着している場合には、物理的に装着できても情報通信ができない場合には機能が働かないケースもあると思われますので注意が必要です。


【原理を知れば苦手な被写体が判るはず】

このような原理で手ブレを軽減してくれるのは有難いことで、常に補正はOnとして撮影しておきたいものです。この機能が出てきた黎明期にはバッテリーの消耗具合が非常に激しかったりしたものですが、最近では改善されてきているようです。

さて、カルチャーの教室でも稀にお聞きすることがありますが、「手ブレ補正付きなんだけど、いつも流れた写真ばかりしか撮れないんです...。」という事例。その写真を拝見すると、暗い室内で動き回るワンちゃんだったり、部屋の中を走り回るお孫さんの写真だったり、ということがほとんどです。

もうおわかりですね?これは手ブレよりも被写体ブレが大きくなってしまう状態になっているわけです。

写真は動きを止めて撮影することができますが、それはシャッター速度によります。短い時間にすればするほど早い動きも止める(止まって見えるように撮る)ことができます。反対に遅いシャッター速度では、動きは止まりません。どんどん速度が遅くなると、今度は撮影しているカメラの動き(これは撮影している人間の体が動いてしまう)が、止まって見える限界を超えてしまうので、この時点で手ブレが起きてしまいます。

手ブレ補正機能は、この人間側の動きを打ち消すもの。と前述しました。暗い室内など光の量が十分でない環境では、必然的にシャッター速度を遅く(長く)して多くの光を与えなければなりません。そのため、動きのある被写体では流れて写ってしまう、という状況になります。幸い、手ブレ補正機能が人間側のブレの原因となる動きについては解消してくれますが、早く動き回る被写体側には手ブレ補正機能は意味がない。ということになるのです。

(参考写真:サッカーボールの勢いは1/1000秒でもまだ遅い=右足はかろうじて止まって見えるがボールは止まらない)

(参考写真:早い弓の動きは、手ブレ補正機能では対応できずシャッター速度を早くするしか止める方法はない)

また、メーカーキャッチには「絞り4段分の補正効果」といった記述がありますが、例えば1/250秒でなければ手ブレしてしまう...という望遠レンズ撮影を例として考えてみます。4段分ですから1/15秒でも撮れる!という驚異の性能であるわけです。ところが、もともと暗くて初めから1/15くらいの状況であった場合には、そこから4段分となる1秒(1秒間まるまるシャッター開き放しです!)を200mm望遠レンズ手持ちで撮れるか?というと、これはかなり難しい条件になることが容易に想像できます。

手ブレ補正機能は、あくまでも「軽減してくれる」というものですから「ブレない」ことを保証するものではありません。この点を忘れないようにしたいものです。相手が早く動き回る被写体では意味がない場合もあることを知っておきましょう。


(次回コラムは、「レンズフードは飾りではないんだけれど」を予定しています。お楽しみに。)


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