
- 眞鍋 顕宏
- 株式会社クレオ・アソシエイツ 代表取締役
- 兵庫県
- コミックデザイナー
対象:クリエイティブ制作
- 赤坂 卓哉
- (クリエイティブディレクター)
- 赤坂 卓哉
- (クリエイティブディレクター)
マンガにもスピード感やスローモーションなど、まるで映画を観ているかのように、
時間の流れに抑揚をつくり、場面を盛り上げる方法があります。
それを私たちは「時間の支配」と読んでいるのですが、それはある人気漫画に学ぶ
ことができます。
「SLUM DUNK」
この漫画はご存知の方も多いと思います。高校バスケットボールを題材にした
井上雄彦先生の代表作です。「週刊少年ジャンプ」では1990年から1996年の
6年間連載され単行本も31巻。
私がこのマンガと出会ったのが大学生時代でしたが、当時これほど動きの速い
スポーツを漫画として確立された作品は見たことがありませんでした。
その完成度は言うまでもありませんが、いろいろ特長を見ていると、あることに
気がつきます。
そのひとつは、
「物語の中でおこる実際の動きの速さに対して、コマの進みが遅い」ということです。
時にはシュートをきめるまでのスローモーション。そして時にはドリブルやパスの
スピード感溢れる展開。しかも、ひとつのアクションの中に、いや1秒という瞬間の中に
多くのコマを大胆に使っています。そこには様々な登場人物の思いや回想シーンが差し込まれ、
実際にはほんの一瞬の出来事が、マンガでは複数ページにまたがって描写されることで、
読者はそれを2~3分をかけて読んでいるのです。それなのに、ストーリーに合わせた時間感覚
になれるのはどうしてでしょうか?
「時間の支配」
マンガにはこれができるのです。
このような感覚は、他のスポーツマンガでもあるのですが、スラムダンクは特別スローなコマ
展開やスピード感を醸し出す高度なテクニックを使っているのです。そこにはコマの数は関係
ありません。
例えば、「シュートを打った時の手」、「手から離れたボール」、「そのボールを見つめる選手
と観客」...そこには言葉のない無音の世界。そこにコマを多く使うことでスローモーション
が生まれます。シュートが決まり歓声があがれば、またもとのスピード感にもどす。
そう、コマ使い方で時間をコントロールすることができるのです。
ちなみに週刊少年ジャンプで連載された6年間に対して、物語では4ヶ月位しか経過していません。
それなのに、時間の感覚を感じさせないところがマンガの表現力。このようにマンガは時間を
ゆっくり展開させたり、スピード感をつけたり、時間を飛び越えたりと時間にメリハリをつける
ことで読者を物語の中に引き込んでいくのです。
ぜひ一度、普段何気に読むマンガで、少し時間を意識しながら読んで見てください。
そこには作家のあらゆるテクニックが隠されていることに気がつくかもしれません。
これは娯楽としてのマンガだけに使えるテクニックという訳ではなく、
ビジネス向けのマンガにも充分応用ができることです。
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