EMDRセラピー

EMDRセラピーの説明をするときに「棘（とげ）」を例にすることがあります。

過去の出来事は刺さった棘のように記憶の神経にたくわえられています。普段全く忘れていた出来事でも　何かの拍子に思い出すことがあります。それは脳の神経に蓄積されているからです。

クライエントのQさんとお話していてQさんの「怒り」の沸点が低いことに気づいたことがありました。Qさんの記憶で「怒り」を覚えたことを思い出して頂きました。そして　それについてEMDRセラピーを行いました。

EMDRセラピーでは　不快度を0～10の数値でクライエントの方に判断して頂きます。

始めに10だった数値が　20回のEMDRの刺激の後に0になりました。その瞬間、Qさんは

「何だか頭がすっと軽くなりました。」

とおっしゃいました。

「20本の棘の重みでしょうか？」

二人で大笑いになりました。

10日後

「不思議なんです。いつもならイライラして何か言いたくなるはずなのに　イライラしないんです。この効果って続くんでしょうか？」

別の方も同じようなことをおっしゃいました。

その方もEMDRセラピーの後、ご自宅に帰られて　「いつもイライラする場面に　イライラしない！半信半疑です！」とメールを下さいました。

時間がかかる場合ももちろんあります。

幼い頃からのトラウマ、不快な体験、自信を持てなかったという経験、それらが一つで無い場合、記憶の神経がそれぞれを覚えています。ですから　2～3回のEMDRセラピーでは終わりません。

しかし　大きなトラウマが取れた後は　短い時間で否定的な感情から肯定的な感情に動きます。

 十人十色とは　性格の違いを表していますが　EMDRセラピーの効き方、流れも十人十色です。

 2011年3月に

「息子がとうとう会社へ行けなくなりました。」

というお母さんからのメールを頂いたことがありました。息子さんは入社後11ヶ月目でした。

不眠、嘔吐、震え、涙等の症状がありつつ何カ月も持ちこたえていました。「一度休んだら　もう行けなくなる。」という思いがあったそうです。

私は、「一日会社を休むだけなら目立たないけれど、3日、4日と長引かせてはいけない！」とお母さんにすぐ返事を送りました。

「彼にEMDRセラピーをしたいので　来るように伝えて下さい！」

結果、メールを頂いたその日にEMDRセラピーを青年にすることが出来ました。

その日、彼の口からは

「会社、辞めます。もう頑張れません。」

が繰り返し出て来ました。

EMDRセラピーの説明と「安全な場所」「彼が持っている強み」のインストール、「トラウマ解消」で合計4時間かかりました。

「僕は会社を辞めるかもしれません。でも　そういう僕を見捨てないで下さい。」

と岐路につきました。翌日、無事に帰宅出来たか否かを聞いた私のメールに返信がありました。

「会社へ行って来ます。」

・・・・・

その後半年経ちましたが　すっかり回復して入社2年目の後半に入りました。

お母さんから「顔が全く違う。もう大丈夫だと感じる。」と伺いました。

当たり前のことですが　信頼が根底にあることが　セラピーが良い結果を出せることにつながると実感しています。

信頼しあえる関係を持てるように　努力を続けたいと思います。