じゃがいもの冷製スープ「ヴィシソワーズ」の意味 - 西洋料理 - 専門家プロファイル

塚本 有紀
フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
大阪府
料理講師

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閲覧数順 2024年04月24日更新

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じゃがいもの冷製スープ「ヴィシソワーズ」の意味

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フランス料理

夏、レストランに出かけると、じゃがいもの冷たいスープ「ヴィシソワーズ」がよく出てきます。キンと冷やされたそれは、瞬間に涼をもたらしてくれます。

ヴィシソワーズvichyssoiseとは、フランス中央部ヴィッシーVichyの町の名前に由来します。ヴィッシーの町は水が有名で、温泉町としても名を馳せています。19世紀にはナポレオン3世がリュウマチ治療に用いたことから湯治場として栄えてきたのだとか。ちょっと塩気がある、ガス入りのヴィッシーの水はフランスではとてもメジャーで、スーパーにもたくさん売られています。

 

さて料理のほうのヴィシソワーズは、じゃがいもとポワロー(西洋ねぎ)のピュレに生クリームを加えた冷製のポタージュです。ポワローをゆっくり炒め、じゃがいもを加え、水を入れて柔らかくなるまで煮ます。これを漉して、生クリームでつなぎ、シブレットを散らしたらできあがり。定義としてポタージュというからには、本来的には「だし」(ブイヨン)で溶くべきでしょうが、真夏に限っていえば、私は水で作るほうが断然好きです。(*定義上は、水で溶いたものがスープです。)

じゃがいもとポワローだけなのに、味にしっかりとした骨格があり、「野菜ってすごいなあ」と毎回感心します。逆にとても暑い日に、じゃがいも味の奥にブイヨンの風味がしてしまうと「ちょっと邪魔!」とさえ思ってしまいます。もちろん季節が移って来たら、ブイヨンで溶いたほうがおいしいでしょう。ポワローは旨味と甘みの裏打ちのために使います。お家で作るときは、(ポワローはいつでもどこでも売っているわけではないので)長ネギと玉ねぎで代用してもよいと思います。

 

考案したのは、1920年代にNYのリッツカールトンホテルの料理長だったフランス人。この方の出身地がヴィッシーの近くだったからヴィシソワーズと名付けられたのだとか。出身地ならまだしも、「・・・の近く」とは、ネーミングとしてはちょっと遠いのでは・・・。せっかく後世に残る偉大な料理を発明したというのに! クラシックの料理やお菓子にはよくダイレクトに人名が付いたりするものの、通常は「捧げる相手」の名前が付くことが多いので、これも仕方がないのかもしれません。たとえばピーチ・メルバはエスコフィエが歌姫のメルバに。クレープ・シュゼットはエドワード7世のお連れの女性シュゼットに。シャルロットはシャーロット妃に、ベシャメルはその料理人がベシャメイユ侯爵に捧げたものです。

 

にんじんのヴィッシー風carottes a la Vichyという料理もあります。輪切りにしたにんじんを、(本来は)ヴィッシーの水で煮てからグラッセにしたもの。ヴィッシーの水は肝臓や消化器系によいとされることから、身体によい料理というイメージがあるようです。

 

「いつかヴィッシーに行ってみたい」と思いつつ。

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