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中国特許判例・審決紹介:中国におけるソフトウェア/ビジネス関連発明の保護適格性(2)(第1回)
~ビジネス関連発明の保護適格性と審査~
河野特許事務所 2011年9月16日 執筆者:弁理士 河野 英仁
雅迅ネットワーク有限公司
復審請求人
1.概要
中国においては特許を受けることができない発明の一つとして、「知的活動の法則および方法」が挙げられている(専利法第25条第1項(2)[1])。そして、審査指南第2部分第1章には特許を受けることができない「知的活動の規則と方法」の例[2]として以下を挙げている。
「組織、生産、商業実施及び経済等に関する管理方法及び制度」
従って、オークション方法、広告方法、経営管理方法等の所謂ピュアビジネスモデルについては特許を受けることができない。一方、コンピュータ及びネットワーク技術を利用してビジネス方法を実施することを主題とするビジネス関連発明(以下、BM関連発明という)については、一定条件下で特許を受けることができる。
BM関連発明もコンピュータ・ソフトウェア関連発明(以下、CS関連発明という)の一種であり、審査指南第2部分第9章に基づき保護適格性についての判断が行われる。しかしながら、審査基準内にはBM関連発明についての具体的な判断手法は記載されていない。
本事件で問題となった発明はタクシーメータの税管理に関し、所謂BM関連発明の範疇に属する。審査においては非技術的なアイデアであり、専利法第25条第1項(2)にいう「知的活動の法則及び方法」に該当するとして拒絶された。復審委員会[3]は現有技術[4]と相違する部分が技術的な特徴を有するとして専利法第25条第1項(2)に該当するとした審査官の判断を取り消した。
2.背景
(1)発明の内容
雅迅ネットワーク有限公司[5](以下、請求人という)はGPS(Global Positioning System)を用いたナビゲーション装置を開発する中国民営企業であり、タクシー、バス、トラックに対する運行管理事業を行っている。請求人は、2001年10月31日国家知識産権局に発明特許出願を行った。出願番号は01134137.8であり、発明名称は“タクシーメータの税管理情報転送方法”である。
従来は、タクシードライバーが運行データをICカードに記録し、管理部門に記録済みのICカードを手渡すことで運行状況の管理が行われていた。しかしながらこのような方法ではリアルタイムで、タクシー運営に関する税情報を管理できないという問題があった。
本発明はこのような問題を解決すべく、以下の構成により、リアルタイムでの税管理情報の獲得を行うこととしたものである。争点となった請求項1及び請求項2は以下のとおりである。
“1.タクシーメータの税管理情報転送方法において、
タクシーメータの必要なデータを収集し;
収集したタクシーメータのデータを、RS232通信ポートを通じて車載移動端末へ送信し;
指令に基づき、送信された車載移動端末のデータを無線デジタルセルラー電話ショートメッセージに基づき伝送し;あるいは、送信された車載移動端末のデータをその内部のメモリに保存し,再び設定された指令に基づき、車載移動端末内部メモリのデータを取り出し,かつ無線デジタルセルラー電話ショートメッセージに基づき転送し;
ショートメッセージ通信器の制御指令に基づき、ショートメッセージ処理に応じたデータをGSMシステムのショートメッセージサーバへ伝送し;
GSMシステムのショートメッセージサーバによりデータを、DDN専用線を通じて制御管理センターのSMSフロントエンド装置へ転送し,かつメモリに保存し;
指令に基づきメモリに保存したデータに対し処理を実行する
ことを特徴とするタクシーメータの税管理情報転送方法。
2.前記設定された指令はショートメッセージ発信間隔時間あるいはメモリのデータ量であることを特徴とする請求項1に記載のタクシーメータの税管理情報転送方法。
[1]専利法第25条(特許を受けることができない発明)
次に掲げるものに対しては、特許権を付与しない。
(1)科学的発見。(2)知的活動の法則及び方法。(3)疾病の診断及び治療方法。
(4)動物及び植物の品種(5)原子核変換の方法により得られる物質。(6)平面印刷品の模様、色彩又は両者の組合せについて主に標識として用いられるデザイン。
前項第(4)号の製品の生産方法に対しては、本法の規定に基づいて特許権を付与することができる。
[2] その他、「コンピュータ言語、計算規則」、「数学理論及び換算方法」、「各種ゲーム、娯楽の規則及び方法」、「情報表現方法」、「計算機プログラムそのもの」が該当する。
[3]復審委員会は日本国特許庁審判部に対応し、専利法第41条に規定する復審(日本の拒絶査定不服審判に相当)及び専利法第45条に規定する無効宣告請求(日本の無効審判に相当)事件を取り扱う。
専利法第41条
国務院特許行政部門は特許復審委員会を設置する。特許出願人が国務院特許行政部門の拒絶査定に不服があるときは、通知を受領した日から3ヶ月以内に特許復審委員会に不服審判を請求することができる。特許復審委員会は審判後に決定をして特許出願人に通知する。
[4] 「現有技術」は専利法第22条第5項に定義されている。専利法第22条第5項の規定は以下のとおり。
「本法にいう現有技術とは、出願日前に国内外で公衆に知られている技術をいう。」
[5] 雅迅ネットワーク有限公司のHP(中文)
(第2回へ続く)
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