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米国特許判例紹介:機械分野における明細書の記述要件(第4回)
~課題に対する解決手段が複数存在する場合の取り扱い~
河野特許事務所 2011年7月29日 執筆者:弁理士 河野 英仁
Crown Packaging Technology, Inc., et al.,
Plaintiffs Appellants,
v.
Ball Metal Beverage Container Corp.,
Defendant- Appellee.
4.CAFCの判断
明細書は強化ビードの改良なしに、チャック壁の傾斜を変化させるだけで金属節約を達成するクレームをサポートしている
CAFCは明細書には、金属の使用量を低減するためには、チャック壁の傾斜の増加と強化ビード幅を狭くすることの双方が必要であるとはどこにも記載されていないと述べた。更に明細書には、チャック壁の傾斜を変更した場合の圧力の変化を示す実験データが記載されており、当該実験データによれば、強化ビードの幅を狭くしなくとも金属の使用量を低減できることが裏付けられる。
CAFCはこのように、明細書は強化ビードの改良なしに、チャック壁の傾斜を変化させるだけで金属節約を達成するクレームをサポートしていると判断した。CAFCは明細書には傾斜増加による一つの手段が明確に記載されており、他の手段である強化ビードについての記載が十分でないことのみをもって特許を無効とするほど記述要件が厳格に適用されるものではないと述べた。
5.結論
CAFCは、記述要件の判断を誤った地裁の判断を無効とする判決をなした。
6.コメント
本事件ではチャック壁の傾斜だけで課題を解決することができることから、強化ビードについて細かな態様を記載していなくても記述要件を満たすと判断された。しかしながら、課題について複数の手段が存在し、これらをクレームに記載するのであれば、各手段をサポートする詳細な実施例を明細書中に記載しておくことが望ましい。
本件と同じく記述要件が争点となったRevolution Eyewear事件[1]においては、対象特許は先行技術の問題として、「安定支持」及び「強度劣化」の2つを挙げていた。しかしながら、クレームには、後者の「強度劣化」問題を解決するための手段しか記載していなかった。
被告は、当該クレームは米国特許法第112条パラグラフ1の無効理由を有すると主張した(米国特許法第282条)。これに対しCAFCは、明細書において2つの異なる問題を先行技術欄において設定した場合でも、特許の各クレームが、双方の問題に言及する必要は必ずしもないと判示した。Revolution Eyewear事件および本事件において明らかになったとおり、CAFCは課題の数と解決手段の数とが一致しないことだけを理由に、記述要件違反とする傾向にはない。
判決 2011年4月1日
以上
【関連事項】
判決の全文は連邦巡回控訴裁判所のホームページから閲覧することができる[PDFファイル]。
http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/10-1020.pdf
[1] Revolution Eyewear, Inc. v. Aspex Eyewear, Inc., 563 F.3d 1358, 1365(Fed. Cir. 2009)
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