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鈴木 克彦
株式会社マクス 代表取締役
建築家

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閲覧数順 2024年04月19日更新

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イメージではなく太陽光発電を考える

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太陽光発電に関する私の(かなり独りよがりな)意見を書かせていただきます。

読む方によっては、反対のご意見をお持ちの方、不愉快に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、あくまで「私の個人的な太陽光発電への感想」だと思って読んでいただければ幸いです。

「光熱費ゼロの家」
もの凄いネーミングです。
確かに光熱費がかからないなんて夢のような家です。

今や家造りの際には、太陽光発電システムは、半数近くの方が検討するそうです。
(採用するかどうかは別として)

その理由として、
約2割の方は、地球環境のため、
約7割の方は、光熱費削減のため、
だそうです。

実際、4.5kw以上の発電システムを搭載した家では、約半数の世帯で、光熱費が年間二万円以下と、『まぁ「ゼロ」と言っても良いでしょう』レベルに達するという報告があります。

政府は、二酸化炭素削減の御旗のもとに、2020年には現状の10倍、2040年には40倍の目標を掲げ、補助金や売電価格の割り増しなど、手厚く保護をしているのはご存じの取りです。

現在の太陽光発電の主流は「多結晶シリコン太陽電池」。
シリコンはご存じの通り「レアメタル」ですから、製造段階で何とかこれを減らす技術が期待されており、現在、シリコン系電池としては、薄膜化が盛んに研究されています。

同時に、コストを抑え、変換効率を上げる化合物系電池の開発も進められています。


薄膜シリコンや、有機薄膜などを用いた化合物系の、低コスト&高効率の太陽電池は、「第二世代太陽電池」と呼ばれ、すでに実用段階に入っており、2030年までに火力発電並みの7円/kWhを、さらに変換効率を15~22%までに引き上げる事を目指しています。


ん?
火力発電並みの7円/kWh …?

変な言葉が出てきましたね。


そもそもシリコンはレアメタル。
レアメタル、レアアースというと、昨今のキーワードとして、中国がらみでさかんにマスコミに出てきました。

製造段階での人的安全や有害廃棄物処理が・・・なので、生産コストが安い、というあの話です。

ポリシリコンが1トン製造されると、4トンの四塩化ケイ素が廃棄物として出るといわれ、それによって有毒な塩化水素ガスと酸が分離して空中に漂うのだそうで、コストばかりを気にして、そういう側面を見ないようにすると、結果として地球環境には甚だ優しくないという側面も…。

先ほどの「火力発電並みの7円/kWh」に戻ります。
つまり、火力発電所では、1キロワットの電気を作るのに、7円(最新鋭の発電所では4~5円)かかっているという意味で、
これに太陽熱発電を近づけたい、という事です。

つまり、現状では、「この数値から遠く離れている」と言うことで、実際、太陽光発電の1kw当たりの発電単価は、計算にもよりますが50~100円/kWhと、全くお話にならないレベルです。

高コストの原子力発電でさえ、10円/kWh前後だそうなので、兎にも角にもイニシャルコストを抑え、商品レベルでは現状10%ちょっとの変換効率(つまり太陽のエネルギーをどれだけ電力に変換できるか)をぐっと上げない限り、まだまだ趣味的贅沢品と言われても仕方のない側面があると言わざるを得ません(個人的意見ですが)。

よく聞くセールストーク、「△年で元が取れます」についても、
【昼間発電した電気を、普通の電気代の倍の価格で買ってくれる】
   &
【夜は非常に安い深夜電力が存分に使える】
という、お得感を演出するために作られた料金システムがあってこそです。

そして、このお得感を演出するために作られた料金システムこそ、一度出力を出すと夜間の発電を抑えるのが難しい原子力発電所が生み出す夜の余剰電力から生まれた料金システムで有ることを、まさに今我々日本人に突き付けられている問題として認識する必要があります。


さらに、これら偏屈な意見は無視し、
「補助金もあるし、家計に優しいんだから良いじゃん!」
と考えても、結構いろいろな問題があります。

・長期間の利用による発電効率の低下
・屋根面のメンテナンス

と言う問題です。


埃や汚れでも発電効率は下がりますが、それ以外にも、経年劣化により、発電効率は20年で2割減、という報告もあります。

勿論、故障してもダメです。

ある報告によれば、設置後10年以内に、一部でも何らかの原因によってパネルを交換した割合は13%だった、とのこと。
メーカーの保証は切れちゃうし、元が取れるのはこれから、と言う時に何ともご愁傷様です。

写真は、そのパネルの不具合の例。
住まい手が自ら、発電量・光熱費をグラフにでも付けていなければ、パネルの不具合や性能低下は、目に見えない屋根の上で起こるだけに、「気付いていない」ケースも十分考えられ、この交換の数字は実はもっと高いのではないでしょうか?
(データ及び写真は日経アーキテクチャーより)


また、補助金を追い風に、流しのリフォーム屋だけでなく、大手家電量販店も太陽光発電に力を入れていますが、
そもそも、前述の売電価格二倍というのは政府お得意の後先考えない政策であって、10年後には売電価格は通常に戻る。
減価償却期間は、住宅の断熱性や気密性を無視して、屋根面積と方角からのみ算出したデータを元に検討しても、ぱっと見説得力があるだけで、そのシミュレーションは何の意味も持たない。

これちゃんとお伝えして営業してるのだろうか…。

建築を知らない素人が取り付けたとしか思えない様な工事による雨漏り事故も、問題化しており、そもそもきちんと施工するにしても、屋根材の上からビスをもんじゃって、その雨漏り対策をシーリングのみに頼るのは、長期耐用の観点から見るとあまりにお粗末。

某メーカーの太陽熱温水器やカバー工法アルミサイディングのように、一世を風靡したけど会社が倒産して、ずさんな工事の代名詞になった…、何てことが無い様に祈りたいものです。


もっとも、多接合型太陽電池ほか、第三世代太陽電池も開発が進められており、コストを抑え、変換効率50%を超える夢のような太陽電池の開発も進められているそうで、この辺は、技術立国日本がしっかりとイニシアティブをとって、世界の電力事情を変えるような日が来ると良いですよね。

その頃には、
屋根に太陽電池を載せないなんてナンセンス!
何て時代が来るのでしょう。

ですが、商売だけ考えるのではなく、お客様のトータル面での損得を考えると、まだ今のところ、私はお勧めは…

本当にエコなのか?
と環境面を考えると、まだまだ付けられないレベルだと思いますし、
環境面は無視してコストの面だけ考えても、設置直後から得するわけではなく、
・性能低下
・故障リスク
・トラブルによる家自体のメンテナンスリスク
を度外視した上で、
さらに売電価格の制度上のカラクリの上で、
やっと十年とか二十年以降に得だというこのシステム。

もっともっと良いシステムに、性能もコストも品質も向上してから取り付けるでも、遅くはないのではないだろうか?

 

   施工:株式会社マクス   代表取締役 鈴木克彦ブログ: 【頑張れ四代目日記】

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