- 杉浦 繁
- Atelier繁建築設計事務所 代表
- 愛知県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
仕事柄、建築や住宅の専門書っていう本を月に何冊も、額にすると何万円も買うのですが・・
実はあんまり一般向けの住宅本や雑誌なんかは買ったりはしません。
専門書っぽく・・書いてある一般向けの本なんかです。
なぜかというと、どうしても商業主義にのっているために偏った情報になっていることが多いからです。
この免震装置が素晴らしい、なんて書いてある本はあの免震装置はよくない、と書いてあるわけです。
自然素材が一番と書けばそれは製造建材は駄目だということになってしまう。
何かがいいと書けばそれはあれは駄目だになってしまい・・
全部の種類を書けばいいのですが、そうすると書いてあるスポンサーの不利になってしまうのです。
広告なくして本や雑誌はなりたたないので、スポンサーの不利になることは絶対に書きませんし、スポンサーの商品を優先的に紹介します。
別に悪口を言ってるわけではないのです。
だって、ちょっとした専門書は1冊5000円なんてのは当たり前、何万円なんてのもごろごろ・・
一般の住宅本なんてたかだか900円とか1500円とか・・
そうしなければそんな値段にはならないのです。
一般の人が買えるような値段で売れないのです。
まあ、本を書く人もなかなか大変だろうなんて思います。
ああ、自分の商品とかを売りたい人はそのつもりでやってるんでしょうが・・。
ああいう一般本ってたいてい著者はその商品や工法の元製作者とか発明者なんですよね・・。
基本的には何かの情報が欲しくて一般本や雑誌を読む時は、それと反対意見を同時に読んで比較してから決めるのが一番だと思っています。
以前、住宅外断熱の一般本が大ベストセラーになったことがあります。
世の中は猫も杓子も外断熱が一番!
他の断熱はけっちょんけちょん!
あう客あう客みんな外断熱にしたい!って言われるわけです。
ブームです。
こちとらほんとに大迷惑!
いえ外断熱がいけないなんて一言も言ってませんよ・・
むしろ良い物です。
ただ、断熱にはいろいろな方法や工法や種類があり、それにはそれぞれ良い所や悪い所があり、向き不向きがあり、家には予算があるのです。
その地域や環境や建物や使い方や住み方に予算内で一番相応しい物を選ぶのです。
温暖な地域に建つ在来木造のローコスト住宅に高気密外断熱なんて・・
そう、効果の少ない物に普通の何倍ものお金を掛けてしまい」他は何も出来ない・・
悪口など言いたくはないのですが、それ以外は全部駄目なんて言い方には抵抗を感じます。
彼らの言いぐさが正しいのなら、私の今まで建ててきた外断熱以外の住宅は全て欠陥と言うことになるはずなのですが・・
今だそれが理由でクレームになったことも文句を言われたこともありません。
ま、むこうも商売ですから当然っちゃそうなんですが。
うまいのは、どんなにお金掛けてもそれがどうなのかよくわからないこと。
それから、決してそれが悪い物ではない建物の性能が落ちたり欠陥になったりする物ではないこと・・
それによって不都合なんかでない・・
本当に性能がいいのか悪いのかどうかなんて比べようがない、わかりゃしない・・
つまり、後から文句言われるような物ではないのです。
うまいね。
ところがです、その後これに対して他の断熱の会社や研究者達がもの凄く怒った・・
まあ当然といえば当然ですが。
それで外断熱なんか駄目じゃって言う本をいっぱい出した。
そこらじゅうの雑誌がそんなことはないぞ特集を・・
したら、面白い物でそれがまたベストセラーに・・
またまたブームです。
世の中面白いっちゅうか・・
意味わからん?
ブームは怖い。
今度は猫も杓子も外断熱は危ない?
だから・・
そんなことはないって。
そういうこっちゃないって。
一つだけ確かなこと・・
それは一番儲かったのは出版社。
それが商業誌です。
だから両方読みましょう。
あっちを読んで感心したら、今度はこっちを読むのです。
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