『原因追究』VS『責任追及』 - コラム - 専門家プロファイル

福岡 浩
有限会社業務改善創研 代表取締役 業務改善コンサルタント
神奈川県
経営コンサルタント

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閲覧数順 2024年04月17日更新

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『原因追究』VS『責任追及』

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ISO9001を認証取得した組織(会社)は、不適合製品(サービス)が発見されると、必ずその不適合の原因を究明しなければなりません。しなければならないと言うよりは原因究明は当然の業務となっています。

ISO9001『品質マネジメントシステム』が十分に浸透し、定着した組織では原因追究が徹底されています。しかし、そうでない組織では、「原因追究」が次第に「責任追及」になってしまい、最後には真の原因を突き止められないまま、ある特定の人の責任を追及し当人が謝罪したり、始末書を書いたりして終わります。誰かのせいにして問題を解決したことになれば、「原因追究」はできないので、「是正処置」につながらず水平展開もできません。

サービス業の場合に置き換えて考えれば、不適合なサービスが発生するとはどういうことなのでしょうか?不良なサービス、すなわち、顧客に引き渡してはいけないサービスです。サービスは復元性がないために、一度引き渡した(提供した)サービスは元には戻せません。例えば、認知症の知識がない新米の介護職員が、認知症の要介護高齢者の介護サービスを提供したなら、それは、明らかに「不適合サービス」となります。勿論、「認知症要介護高齢者には、認知症の知識、経験がある介護職員が対応すること」というルールがあることが前提になります。この問題の原因は「新米介護職員が認知症の知識がない」と言うことを知らなかった管理者が職員配置を決めたから、その管理者が悪いというこことになるのでしょうか?ここで責任追及が始まり、真の原因追究がとん挫してしまいます。

本来的には、「なぜ、なぜ、5回」が必要だと言われています。トヨタの社内では、日常的に行われているのが、「なぜ」を五回唱えることが原因究明の第一歩とされています。管理者が知らなかったことは、それ自体に原因がないのでしょうか?知らなかった管理者本人が悪いということで終わらせると、同じミスがまた起こります。管理者が知らなかったのは、なぜでしょうか?これを追究しなければなりません。「知らない」状態にあったことは、本人に確認する必要があるから、「責任追及」のように問い詰めることになります。ここで、『原因追究』VS『責任追及』が始まるのです。

ISO9001が求めているのは継続的改善です。そのためには不適合サービスが発生したら、その原因を追求し、原因となった仕組みを見直して是正処置を行います。さらには、このことを他の部門部署にも知らせて、同じ不適合サービスが起きないよう予防することを奨励しています。大企業で何か大きな失態や不正事件が起きると、決まり文句のように経営幹部や役員が出てきて、報道陣に対し「あってはならないことが起きてしまい、誠に遺憾です。ご迷惑、ご心配をおかけして大変申しわけありませんでした。今後は指導、監督を徹底したいと思います。」などと言って、深々と頭を下げて一件落着としてしまいます。

例えば、病気や怪我を治療する医療機関や介護サービスを提供する介護事業所、介護施設は、患者や要介護者に対して最適なサービスを提供する責任を負っています。また、一方で不適合サービスが提供されないような仕組みを構築しなければなりませんが、万が一、不適合が発生した場合にもその原因を追求し是正する仕組みもなければなりません。それが十分にできない責任は経営者(トップマネジメント)にあります。経営者には常に『責任追究』のリスクがあるからこそ、介護現場、医療現場における不適合の発生には、徹底した『原因追究』を求めなければなりません。

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