- 小形 徹
- 小形 徹 * 小形 祐美子 +プロスペクトコッテージ 代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
心地よい家、とはなんだろう
このコラムでは、私たちがこれまで設計してきた住宅や
その周りにある物事をとりあげながら、「心地よい」ということについて考えてみたい。
< 束縛されない自由も、心地よさ >
冬の陽だまりが気持ちを和ませてくれたり、夏に穏やかな夜風が涼しさを
運んできてくれたり、そんな身体で直接感じることができる心地よさと言うものは、
誰でもがイメージできることだ。
今ここでとりあげる住宅は、周りの家々に比べひとまわり小さく、
とてもシンプルな箱型で、銀色の波板でくるまれている。
建主はまだ若く20代の後半の夫婦。子供はまだいない。
彼らは生活が不本意な物事で拘束されるのを嫌っていた。住まいを作る際にも、
倉庫のようなものでとりあえず良い、と考えていた。
なにより将来にわたって家に拘束されたくないと考えていた。
この夫婦にとっての心地よさは、束縛されない自由と潔さだったのだろう。
この家は、水周りやトイレなどを除き、区切られた部屋は寝室ひとつと納戸だけ、
後はLDKと吹き抜け、廊下のようなフリースペースがあるだけ、
という単純なものになった。
あまりにもコンパクトにしたため、
住宅金融公庫(当時)からの融資を受けるにあたり、最低面積制限に抵触し、
玄関部分を付け足したというのはいつも語られるエピソードである。
大きさや仕様をコンパクトにそして単純化することで、
建設にかかる金銭的・精神的負担を抑え、
それによって将来にわたる自由を獲得する。
これも<心地よさ>の一つのあり方かもしれない。
久里浜の家 / 木造在来工法 / 2階建て
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