- 原 聡彦
- 合同会社MASパートナーズ 医業経営コンサルタント
- 大阪府
- 経営コンサルタント
対象:医療経営
- 中井 雅祥
- (求人とキャリアのコンサルタント)
- 柴崎 角人
- (行政書士)
今回のコラムは院長、院長夫人に知っておいて頂きたいシリーズです。
税理士事務所から提供される貸借対照表(一定時点の資産負債の状況を表す指標)の見方についてまとめましたのでお伝えします。
1.現預金の残高の推移を見る。
貸借対照表の現預金残高を確認し実際の金額と合致しているかを確認する。たとえば、貸借対照表の残高と預金通帳の残高は合っているかを確認する。そして、通帳を見て不明出金がないかを見ておく事。トップが毎週、通帳を確認しているという事を経理担当のいる医療機関においては従業員へ知らしめる事が内部牽制になる。
2.自己資本比率を見る。
自院の総資本(貸借対照表の負債および資本合計)に占める自己資本の割合である。この比率が多ければ他人資本(負債)依存が低い事になる。財務体質の健全性を示す代表的な指標である。自院の成長と安定性の維持は自己資本比率を高めることにほかならない。
3.固定長期適合率で設備投資に無理がないか見る。
長期にわたって運用される固定資産に投入した資金は固定化されるから返済する必要のない自己資本(手持ち資金)か長期借入金など長期間活用できる資金で補うのが理想的である。資本の調達の仕方と使い方の健全性を判断する指標として自己資本と長期借入金の合計に対する固定資産の割合を見る比率すなわち固定長期適合率が必要となる。この比率は低いほうがよい。
4.流動比率で自院の支払能力を見る。
この比率は1年以内に現金化する流動資産と1年以内に返済または支払わなければならない流動負債とのバランスから自院の支払い能力を見る比率である。一般的にこの比率は医療機関で200%前後である。130%~150%で普通。170%以上は良好といえる。
5.総資本回転率で資本が有効活用されているかを見る。
経営に投下された総資本が有効に活用されているかどうかを見る指標。診療収入をはじめとする1年間の収益で資本が何回回収できるかを知る。医療機関の場合、一般的に総資本回転率は1回転以上が望ましいといわれている。この指標が1回転未満の場合、設備投資額に対する医業収益の不足、収益の獲得に貢献しない無駄な投資がある過大投資状態を示していることになる。
6.経過勘定科目の残高を見る。
仮払金、仮受金がいくらあるか?内容は何かを見る。この勘定科目が不正出金、入金となる場合があるので、残高はあるかないか。毎月確認しておく事が必要となる。
7.貸付金の残高を見る。
貸付金がいくらあるか?誰に貸しているのか?回収しているのか?を見る。医療法人の場合、医療法54条の剰余金配当禁止規定に抵触するケースがあるので注意が必要となる。
8.借入金はいくらあるか?どこから借りているのか?利益で返済していけるのか?を見る。
借入依存度を常に見ておく。また、利益返済できるのか?数値計画(目標数値)をもっておく。そして、予算に対して実績を常に確認しておくことが必要となる。
以上、自院の財務状態を確認するためには貸借対照表を上記1~8は最低、見ておくべき指標内容です。また、貸借対照表と一緒にキャッシュフロー計算書を確認して一定期間の資金の入金出金状況を確認頂きたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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